実験で明らかになった飛行機が不時着したときにとるべき姿勢とは?

このご時世にも「あんな鉄のかたまりが空をとぶのはおかしい」などとむやみに恐れて飛行機に乗れないという人がまだ一定の割合存在するようです。

本当のところ飛行機がなぜ飛んでいるか完全に理論建てて説明するのは不可能だと言いますが、実際飛んでいるわけですから利用者はその理屈など知る必要はありません。テレビ見るのにテレビが映像を写す理屈を知る必要がないのと同じことです。

旅客機というのは非常に多くの飛行実験などを繰り返し、安全なように作られています。事故の確率で言えば地上の自動車事故のほうがよほど多く、飛行機の墜落や不時着といった事故には遭遇するほうが難しいと言ってもいいと思います。

とはいえ、旅客機事故が実際起きた場合の被害は自動車事故の比ではないというのも確か。

旅客機が不時着したらどうなるのか?こんな日本では考えられない実験をしたテレビ番組があります。

「プレインクラッシュ」というこの番組は、ディスカバリーチャンネルを中心にアメリカ・イギリスのテレビ局数社が共同制作したドキュメンタリーです。なんと、メキシコの砂漠にボーイング727を不時着させ、機体の耐久性や衝撃の伝わり方、姿勢による乗客への影響などを調べたというもの。

発想にしろ予算にしろ、日本のテレビ局とは次元が違います。

さて実験ではボーイング727を通常の3倍の降下率で無理やり不時着させました。降下率というのは飛行機が1分間に降下する高度の割合のことです。

降下というよりほとんど墜落といっていいような勢いで地面にぶつかるボーイング727。慣性の法則でひたすら大地を滑り続ける中、操縦席がある機首がぐにゃっと曲がったかと思うとそのまま本体からちぎれて大破!そののち機体のほうが停止しました。

なお、一般的な旅客機のエンジンは主翼の下に取り付けられていますが、ボーイング727は尾翼の付け根にエンジンが付いているので、他の旅客機では不時着した時も角度などに変化があって機首がちぎれるとは限りません。

ただ、確かなことは不時着時に正面から受ける衝撃は後ろに行くほど小さくなっていくので、後部座席に乗っているほうがまだマシということです。

では前と後ろでどれだけ衝撃力に差があるのか?まずF1マシンに乗って高速でコーナーを曲がるときや戦闘機のアクロバット飛行などは5G、つまり体重の5倍の負荷がかかると言われており、このレベルでも訓練を受けなければ耐えられません。

実験での測定結果は、機体前方が12G、真ん中ぐらいが8G、後部が6Gでした。12Gは生身の人間に耐えられない衝撃であり、おそらく命はないでしょう。8Gでも良くて気絶、死なないまでも胸郭が圧迫され肋骨が折れる可能性もあります。6Gでも訓練を受けていない一般人が意識を保てるかどうかギリギリといったところです。

不時着後の機内は天井が崩れ、その上を這っていたケーブルがむき出しになって垂れ下がっていました。実験にはもちろん乗客がいたわけではありませんが、このことからも、頭を丸めて体を伏せる姿勢が有効だということがわかりました。

機内を乱れ飛ぶ部品やケーブルから頭を守るため、そして衝撃によって前に投げ出されないために、シートベルトをしっかり締め、上半身を伏せて頭の上で両手を組むという姿勢をとり、座席が潰れたときに挟まれないように足は前の座席の下に入れない。これが万が一の不時着から極力自分を守る姿勢であるようです。

まあ、それで助かるとも限りませんが・・・やらないよりはマシかも知れません。

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