助走なしで飛べ、減速なしで止まれる航空機の定義
気球からロケットまで、大気中を飛ぶ機械はすべて航空機であると定義されていますが、もっとも大勢の乗客を、いっぺんに迅速に世界中に送り届けることができるのはジャンボ機だけ。
ですが、課題は「離陸と着陸に必要な滑走路の距離」。大きくて重いし、機体の構造上、滑走路なしには離着陸できません。
空港を作る場所が限られるのは、ジャンボ機を置く場所がないというより、長い滑走路を置く場所がないから。ジャンボ機の全長は100mないので、置くだけならなんとかなるかもしれませんが、滑走路は何kmも必要です。
もしジャンボ機が「滑走路なしに空に上昇できる」仕組みだったら、ヘリコプターのように発着の面積が最低限で済みますから、身近な場所にたくさん空港を作れることでしょう。
垂直に上昇して、垂直に降りられる飛行機があったら便利なのに・・・。これは誰でも考えることのようで、VTOL(垂直離着陸機)という種類の飛行機があり、昔から多くの種類が研究開発されています。
滑走路不要は本当で、垂直に離着陸できます。
なんの助走もなく空へ飛び上がって行きますから、何kmも滑走してから飛びたつジャンボ機を見慣れている人にとっては、意外な飛行機かもしれません。
滑走路不要なのに身近で見かけないのは、かなり特殊な飛行機で、これはこれで離着陸する場所を選ぶから。確かに滑走路はいらないのだけど、特別な仕組みのエンジンが必要だったり、やたら燃費が悪かったり、騒音の問題があったり・・・、機種によっては、離陸だけで燃料の大半を使い切ってしまい、長距離を飛べないものもあるそう。
載せる燃料を増やせばよさそうなものですが、機体そのものの重量が増え、燃費が悪くなります。
もっとも生活に身近なVTOLはヘリコプターです。ほんの少しの場所があれば離着陸できるので、ビルの屋上でも問題ありません。ですが、あくまでも「広い意味ではVTOL」なのだそうです。ヘリコプターは「回転翼機」なので、VTOLに含まない慣習になっています。
そうなると、現実的なのは「ジャンボ機の着陸距離を少しでも短縮すること」となります。
着陸距離は「飛行機が滑走路端末部の上方50フィート(15m)の地点を通過した地点から、定常的に進入し、機首を引き起こして接地し、完全に停止した地点までの水平距離」。
それぞれの機体の着陸距離は機種によりますが、ジャンボ機で1~2km、セスナで400m弱。小さな自転車はすぐ止まりますが、重い車はすぐに止まれず、停止するまである程度の距離が必要。それと同じことです。
ただ、こういった着陸距離を算定するときは、「ジャンボ機がブレーキングに使えるもの」すべてを含めて考えて算定するとは限らないそうです。
ジャンボ機が減速に使う方法は複数あって、いつでも単に車輪にブレーキをかけて踏んばって止まる、というようなものではありません。スポイラーで主翼の周囲の気流を制御したり、逆推進をかけたり。周囲の風向きなど、気象条件を利用することもあります。
そういった制御の影響は、着陸距離を算定するときには含まないことが多いので、実際の空港でジャンボ機を停止させるまでの着陸距離は、算定より短めになるはずだそうです。
また、ジャンボ機では数十年前から「アンチロック・ブレーキ・システム」を装備しています。この装置の進化が着陸距離の短縮に大きく貢献し、ジャンボ機の着陸距離の短縮は最大限行われているそうです。