砂漠の昆虫が寒冷地の飛行機を救う!?

最近の科学のトレンドの一つに「自然界に学ぶ」というものがあります。有名どころで言えば、蜂の巣のハニカム構造を応用して建築資材の強度を増したり、蚊の口吻の構造を応用して痛くない注射針を作るなどといったことです。

そのような研究は、航空機に対しても行われています。最近イギリスの科学雑誌『nature』の関連誌『Scientific Report』に発表された論文は、砂漠に生息する昆虫の機能を応用して、飛行機が凍るのを防ぐというものでした。

アフリカ大陸の南西部、南アフリカ共和国の北西隣にあるナミビアの「ナミブ砂漠」には「ナミブ砂漠カブトムシ」という甲虫が生息しています。

砂漠と聞くと単に暑い場所というイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、実際は、日中は40度を超え、夜間は氷点下になることもあるという非常に厳しい環境なのです。

その過酷な環境でも生き残るために、ナミブ砂漠カブトムシの体には非常に巧みな構造があります。その翅は水を弾く溝と、水を集めやすい隆起でつくられており、昼夜の温度差で隆起部に結露した水分が溝を流れて口に集まるのです。

そのおかげでナミブ砂漠カブトムシは効率よく水分を摂取するとともに、体を凍結させずに済んでいます。

ヴァージニア工科大学の研究者はこの翅の構造に注目し、撥水性素材の周囲に水を集めるポイントを備えた素材を作りました。

この水を集めるポイントは一つ一つが計算された距離を保っていて、カブトムシとは逆にそこから流れ出ないようになっています。そうすることで、水はそれ以上大きく集まることがなく、素材の広い部分が凍るのを防げるというわけです。

なぜこのような素材が必要なのか?それは、寒冷地では吹雪などにより飛行機の表面が凍結してしまい、そのために遅延したり欠航したりということが起こっているからで、それを防ぐことはコスト的にも利便性の面でも非常に重要、かつ求められていることだからです。

この新素材が実用化されれば、飛行機のみならず、電車でも自動車でも、寒冷地の交通インフラにとって大きな助けになるのではないでしょうか?これは、日常生活だけではなく、災害救助などといった点でも意義があることだと思われます。

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