ヘリコプター着陸時の問題点とは

街中でヘリコプターが飛んでいる場面は日常的にみられる光景となっています。

また最近はドクターヘリなどの普及によって、空港から空港もしくはヘリポートなどへの着陸のみではないことも多くなっているようです。

しかしながら、ヘリコプターの最大のメリットともいえる「どこでも離着陸できる」という特性が問題点につながることがあるというのです。

そもそも、固定翼機に分類されるジェット機などは、前進速度がないと揚力を発揮することができないため、加速するための滑走路が必要になります。

一方、ヘリコプターは回転翼機に分類され、ローターを回転させて揚力を生み出すことによりで垂直離着陸が可能となるため滑走路は不要、またホバリングといわれる空中停止も可能となっています。

固定翼のジェット機などによる運航の場合は、天候の影響以外で着陸環境が変化するということはそうそうありません。

また天候不良によって視界が確保できない場合でも、条件が整っていれば自動操縦等により安全に着陸することができます。

そもそもジェット機自体のパワー等によって、安全性に影響するほど着陸環境が変化するということはありえないのです。

一方、ヘリコプターについては、そもそも機体が離陸するために必要な揚力発生の原理により、ダウンウォッシュと呼ばれる垂直方向への推力につられて発生する下向きの気流(風)がつきものとなります。

揚力の源となっていることから、大きくて重い機体ほどダウンウォッシュも強烈になることは言うまでもありません。

空港の滑走路や駐機場、常設のヘリポートや艦船のヘリ発着甲板などの場所での発着であれば、風で吹き飛ばれないように注意していればよいのですが、舗装も何もしていない場所や雪上などでの発着時には問題があるようです。

強烈なダウンウォッシュが発生すれば土埃や雪などが舞い上がることとなり、その舞い上がった土埃などによって視界が妨げられる状況のことをブラウンアウト(brownout)無視界状態といいます。

ブラウンアウト状態になると、地上の状況がよく分からないまま着陸操作を行わなければならないことになり、安全な降着が十分に担保できるとはいえなくなるでしょう。

では、ブラウンアウトに対処するためにどのような対策をしているのでしょうか?

ヘリコプターの動作原理上、ダウンウォッシュを発生させないということは不可能であり、またヘリコプターはどこでも離着陸できるのがメリットなので、空港やヘリポートなど離着陸に好適な場所でしか降着しませんということも言い難いところだと思います。

結果的に、ブラウンアウト対策としては、視界が妨げられて状況把握に困難を来たすことがないようにする、というアプローチをとらざるを得ないのです。

土埃や雪などが舞い上がることで操縦士の目視による可視光線を使った視界の確保が妨げられることになるため、可視光線以外の手段を用いて機体周囲の状況をセンシングするという支援方法が研究されています。

イギリス国防省の研究部門・DSTL(Defence Science and Technology Laboratory)が、ヘリコプター・メーカーのアグスタウェストランド社と組んで、暗視ゴーグル(NVG : Night Vision Goggle)などから得た外部の映像をHead Up Displayに表示するシステムを研究しています。

単に赤外線映像などの映像データを表示するだけでなく、機体の高度・速度・動きなどを表示するシンボル表示を併用することにって、状況認識を改善していくという方法になっています。

アメリカのシエラネバダ社(Sierra Nevada Corp.)は米陸軍からの契約で、mm波レーダーを用いたHALS(Helicopter Autonomous Landing System)を開発しました。

mm波レーダーは波長が短い分だけ分解能が高く、近距離で障害物を検知するには適しています。

こちらについても、mm波レーダーによって得たデータはディスプレイ装置に表示する仕組みとなっているそうです。

BAEシステムズ社が手掛けたBLAST(Brownout Landing Aid System Technology)もレーダー方式が採用されており、94GHz帯の電波を使用するフェーズド・アレイ・レーダーが装備されています。

フェーズド・アレイ・レーダーのメリットは、固定式のアンテナ・アレイを使いつつ、電子的に「首を振る」ことで広い範囲をカバーできる点にありますが、コスト的には高くなることが予想されます。

レイセオン社が開発したADAS(Advanced Distributed Aperture System)は、機体の周囲をカバーするように6基の赤外線センサーを取り付けて、そこから得た映像をヘルメットに取り付けたディスプレイに表示するというものです。

ドイツではユーロコプター・ドイッチュラントとESGエレクトロニクシステムの両社が、ドイツ軍のCH-53Gヘリに装備する目的で、SeLa(Sensor-based Landing aid)を開発する契約を受注しました。

胴体下面にカメラを2基、高精度の電波高度計を2基、GPS(Global Positioning System)受信機、地磁気検知装置の組み合わせを使用するということになっています。

SeLaで特徴的なのは、コックピットにいる操縦士だけでなくキャビンにいる機付長のところにもディスプレイを設けている点で、こういった支援手段がないときには機付長が目視しながらパイロットに口頭で指示を出していることから、そのプロシージャーに合わせるということかも知れません。

以上のように、使用するデバイスや手法はメーカーによって特色があります。

どのシステムを採用するかはメーカーもしくはオペレーター次第ということになりそうですが、実際の運用形態との親和性を無視したシステムではうまく運用できないのはどんな分野においてもいえることでしょう。

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