ボーイングが目指す未来の旅客機の形

軍用・民間用を問わず、航空機はとどまることなく進歩を続けています。とはいえ、もちろん速度やステルス性、攻撃能力などが求められる軍用機と、乗客の快適性や環境への低負荷が求められる民間機とは進歩の方向性が異なります。

ボーイング社は、フランスで行われた航空ショーで「Commercial Airplanes Innovation=民間航空機のイノベーション」と題した説明会を行い、将来に向けた民間航空機の方向性を示しました。

そこでボーイング社のマイク・シネット製品開発副社長は、ボーイング社はこれまで約100年にわたり航空機市場をリードしてきており、今後も技術革新によってリーダーシップを強めると宣言。連結性、運行効率、キャビン経験、先進材料、先進技術、代替燃料などの点で革新性を提示。

連結性・運行効率

まず、現在ボーイング社が取り組んでいるのは、飛行機間の連結性を高め、飛行中のある一機がモニタリングした気象条件などの情報を共有化し、その情報を受け取った他機が、気象条件がいいところを選択できるようにするというシステム。

さらにはNASAの「ASTER(Airborne Spacing for Terminal Arrival Routes=ターミナルへの到着ルートのための空輸間隔)」という技術によって飛行機を相互リンク化、航路情報を分析し、飛行中の各機の航路を最適化するという計画もあります。

それにより燃料使用量を最低限に抑え、また到着時間が短縮できます。現在民間航空機は編隊飛行を行うということはありませんが、「ASTER」を導入すれば、貨物機を編隊飛行させることで後続機がいわゆる「スリップストリーム」に入り、さらに運行が効率化できると考えられています。

また、タブレットPC登場以降進められているマニュアルの電子化をさらに推進、操縦室内の完全ペーパーレス化を実現し、パイロット業務の効率を高めることも目指しています。

キャビン体験

旅客機ではキャビンの快適性も重要。ボーイング社は最新機のボーイング787にカーボン素材を多用することで金属素材を減らし、それまでの飛行機がサビ防止のためにキャビン内の湿度を10%という極度の乾燥状態においていたのに対し、湿度25%までに上げることに成功していますが、今後はさらに湿度を上げるとしています。

飛行中の航空機は機体強度を保つためにキャビン内は0.8気圧ほどに下げられていますが、ボーイング787はこの点でも機体強度を高めることで0.9気圧に上げることに成功しています。こちらもより地上の気圧に近づけることを目指しています。フライト時間が長くなるほど気圧の違いは体への負担になるので、地上との気圧差がなくなればより快適に過ごせるようになります。

また、快適性のみならず、キャビン内で光と音を用いた演出を行う準備もされています。

最近は少しずつ機内で通信衛星を経由したwi-fiサービスを提供する航空会社が増えています。ボーイング社は、新鋭機への組み込み式ではなく、既存機に取り付けられるwi-fiターミナルを開発しました。

更に将来的には、到着地の気候をキャビンに取り入れる計画もあるようです。例えば日本が冬の時期に東南アジア方面に行き、飛行機を出た途端にむわっと来る気温のギャップに驚くことがあります。それを、現地に近づくにつれ現地の気候に近づいていくようにすれば、突然の気温の変化にびっくりしないで済むようになるかもしれません。

先進材料

ボーイング社は現在日本の東レと長期契約を結び、カーボン素材の提供を受けています。東レのカーボン素材「トレカ」は、飛行機を軽量化しながらも強度を増すという相反した課題を解決。今後は、そのカーボン素材よりもさらに軽量で強度も高く、なおかつ耐用年数が長い素材を開発することを目指しているようです。

それとともに、使用済みカーボン素材をリサイクルし、あまり強度が必要ではない部分に転用する実験も行われています。

エンジン部分については、排気部分の部品に使うためのセラミック素材を開発中。これは「CMC」と呼ばれるセラミック繊維をセラミックで固めたというものです。セラミックというのは要するに陶器のような焼き物ですから、熱には強い半面、強度は弱いというマイナス面もありました。CMCはその強度を高めようとしたものです。

先進技術

技術部分では、燃料効率を改善する自然層流翼の開発をしています。層流というのは、ある軸と平行に流れる流体の流線を指します。飛行機の場合は翼と平行に流れる気流の流線ということになります。層流に対して、流れが乱れている状態を乱流といいます。

層流と乱流では乱流のほうが空気抵抗が大きくなります。しかし、現在の飛行機の翼は乱流を生み出しています。自然層流翼は、極力乱流の発生を抑えて空気抵抗を小さくするという翼。具体的には、翼の前縁をメッシュにし、飛行前はそこから空気を吹き出して乱流を生み出す原因となる虫などが付着するのを防ぎ、飛行中はメッシュから空気を取り入れて乱流を抑制します。

機体製造技術については、機内の細かい道具からエンジン部品まで3Dプリンターで製造することが研究されています。金属3Dプリンターの進歩は目覚ましく、日本のJAXAでも3Dプリンターを用いた実験用エンジンが作られています。

飛行機に使われているカーボン素材は、カーボンの繊維を織り込んだカーボンの布の如きものを重ねあわせて板状にしています。ボーイング社にカーボン素材を提供している東レはこの重ね合わせを自動化。ボーイングはどうやらこの重ね合わせの自動化技術を自社でも開発している模様。将来的には東レの影響力を削減していこうという目論見もあるのかもしれません。

機体の組み立てに関してはロボット化を推進。これは、製造の効率化を図る外に、危険な工程や人体に対して危険性がある物質を扱う工程をロボットにやらせるという意図もあります。

代替燃料

原油価格の下落以降、石油燃料の価格は下げ止まっていますが、下落の前には高騰していました。飛行機の燃料であるジェット燃料も石油由来。今後また原油価格の高騰によって経営が圧迫されるという可能性は否定できず、代替燃料の開発と導入が急がれます。

ボーイング社は2014年末に廃油から製造した「グリーンディーゼル燃料」を使った飛行実験に成功しています。といっても、これは従来のジェット燃料95%に対してわずか5%グリーンディーゼルを混入させただけというものでした。今後はグリーンディーゼルの他、藻類を原料としたバイオ燃料など持続提供が可能な燃料を開発し、転用する実験を進めていくそうです。

ボーイング社ではそれとともに、太陽電池による飛行検証なども行っています。ボーイング社の子会社・スペクトロラブ社は太陽電池の研究開発を行っていて、世界一の変換効率を誇る太陽電池を作り出しています。

超音速旅客機

ボーイング社はこれらのイノベーションの他に、NASAやロッキードと共同で乗客に負担をかけ、莫大な騒音を生み出すソニックブームを低減できる超音速旅客機の開発を進めています。現在研究開発が進められている超音速旅客機が実用化されれば、マッハ1.6で飛行でき、現在10時間かかる羽田-ロサンゼルス間を6時間以内にまで縮めることができるそうです。

数々の先進技術が実用化されれば、より空の旅が快適に便利になりそうです。

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