航空整備士は、旅客機のお医者さん!?

航空整備士には「旅客機のドクター」との異名もあります。機体をくまなく検査し、不具合があれば直すからです。ですが、まずは人間の健康管理と同じで、旅客機が「ケガ」や「病気」をする前に、予防しなければなりません。

自動車でしたら、走らせてみたらエンジンの調子がおかしい、それではちょっと路肩に停止させて点検しましょう、修理屋さんに電話もして、という風にできます。しかし旅客機の場合、空を飛んでいる最中ですから、その最中になにかあっても、どうしようもありません。

空の上では路肩に止めることもできませんし、修理屋さんを呼ぶこともできないのです。ですから旅客機の場合、フライトの前にも後にも、ともかく点検、ともかく整備、となるわけです。

フライトの合間をぬって行なわれる定期点検だけではなく、同時進行で状態をみながら必要に応じて行なう整備も実施されます。「オン・コンディション整備」と呼ばれる、ジェットエンジンに対して行う整備に関する考え方です。

この整備では、エンジンを機体に搭載したまま、特別製の機器を使って内部検査をします。

ボアスコープ(光学内視鏡)

光学内視鏡は、胃カメラなどに使われる検査方法です。ジャンボ機のエンジンには約20カ所の検査用の「のぞき穴」があり、ここから内視鏡を入れて、内部の様子を観察できます。

ラジオ・アイソトープ(放射性同位元素)

人間の健康診断で使われる「PET検査」と同じものです。機体を分解せずに異常箇所を割り出すために使われる検査方法です。他にも、X線や超音波の反射エコーを使って検査します。

最新鋭の検査機器を駆使するだけではなく、人間のドクターのように、航空整備士が旅客機に対して視診、聴診などを行う場面もあります。機体についた傷や金属疲労は、見た目ですぐに発見できますが、部品のわずかなズレや、微妙な異変などは、機械で測定するよりも人間の手でさわってみたほうが、感覚が鋭いこともあるのです。

目視で判らないような小さな亀裂でも、機体を叩いたときの音の響きを耳で聞いて、それでわかるということもあります。

機械だけに頼らない、人間の感覚を大切にした点検も、航空整備士には欠かせない技術なのです。

関連記事

ページ上部へ戻る