空を飛んでいる飛行機はどうやって識別されているの?

プロペラ機の時代ならばいざしらず、現代では空を飛ぶためのルールがいろいろと決められています。その一つがフライトプラン=飛行計画書の提出です。これを提出することによって、どの飛行機がどこを飛んでいるかが把握され、空の安全が確保されているのです。

フライトプランは計器飛行方式、つまり目視と飛行機の計器双方を使って操縦する方式の飛行機が飛ぶ時は、必ず提出して航空管制官から「管制承認」を得る必要があります。

一方有視界飛行方式、つまり飛行に管制からの指示を必要とせず、目視にて位置を確認する飛行機(プロペラ機など)の場合は国によって違い、日本の場合は出発地から半径10km以上の場所まで飛ぶ場合はフライトプランの提出が必要ですが管制承認を受ける必要はなく、アメリカでは特定の空域以外では距離に関わらずフライトプランの提出は必要ありません。

フライトプランは当然のことながら、民間機だろうが軍用機だろうが提出しなければなりません。我が国では航空自衛隊の航空機も提出します。

さて、フライトプランに記載すべき項目は「航空法施行規則第203条」から抜粋すると

・航空機の国籍記号・登録記号・無線呼び出し符号・型式・機数
・機長氏名(編隊の場合は指揮官の氏名)
・計器飛行方式か有視界飛行形式か
・出発地、移動開始時間、航路

などが定められています。ここに抜粋した項目は半分程度です。簡単に言うとフライトプランというのは航空機の身分証明書です。身分証明書がきちんと提出されているから、国際線の飛行機は外国の領空に入っても撃墜されることなく飛行することができるという訳。

フライトプランは各国の航空交通管制関連部署に提出します。日本の場合は国土交通省の航空局に属する地方支部局の航空交通管制部に提出します。航空交通管制部は、札幌・東京・福岡・那覇の各地にあります。

フライトプランが提出されると、その情報は「航空交通管制情報処理システム(FlightPlan Data Processing system=FDP)」に入力されます。航空交通管制情報処理システムは以下FDPと記載します。

FDPに入力されたフライトプランの対象となる航空機には二次レーダー(トランスポンダー)の識別コードが割り当てられ、フライトプランの内容と識別コードが記載された「運行票」が管制官に渡されます。トランスポンダーは航空機側に搭載されていて、管制側が出した信号に応答する役割を持つものです。

管制官は該当航空機に識別コードを指示、パイロットはそのコードをトランスポンダーにセットします。

この時点でフライトプランを出した航空機には識別コードも組み込まれることになります。

管制は一次レーダー(一般的なレーダーと言われる電波を出して跳ね返ってきたものを探知するもの)が航空機を探知すると、管制側の発信源(インテロゲーター)から出した信号にトランスポンダーが返してきた識別コードを受け取ります。

この識別コードはFDPで関連付けられているので、FDPで識別コードを照会すると関連付けられたフライトプランを提出した航空機が判明します。

識別コードはこのように、個々の航空機を識別するためのものなので、当然重複しないコードを発行しなければなりません。また、管制官が間違ったコードを伝えたり、パイロットが間違ったコードをトランスポンダーにセットしたりすると、その航空機についての正しい情報が得られないことになります。

さて、では管制が送ったインテロゲーターの信号にトランスポンダーが答えなかったらどうなるか?これが所謂「アンノウン=正体不明機」です。正体不明機が領空内に侵入した場合はその国の空軍が航空戦力を差し向け、警告を行い、場合によっては撃墜します。

日本の領空を守っているのは航空自衛隊です。航空自衛隊は防空指揮管制システムによって空の監視を行っているのですが、当然のことながら平時の空を飛んでいるのは民間機のほうが圧倒的に多いわけで、つまり民間機に対してスクランブル出動しないためには民間のFDPの情報も把握していなくてはいけないわけです。

自衛隊は一般の管制とは他に独自に対空レーダー網を構築しています。自衛隊の一次レーダーがとらえた航空機に関しては自衛隊からも信号を出してトランスポンダーからの応答を受け取ります。受け取った識別コードは航空交通管制部のFDPに照会され、その識別コードを持つ航空機の情報を得ることができます。フライトプランが出されている航空機なら自衛隊も出動しなくていいということになります。

さて、では近距離飛行でフライトプランを提出していないプロペラ機や、ヘリコプター、あるいはグライダーなどはどうなるのか?これらは飛行範囲も飛行できる高度も限られているために、特に問題になることはなく、航空自衛隊がいちいち反応して戦闘機が飛んでくるということもありませんのでご安心を・・・。

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