航空整備士になるにはどうすればいい?

青空に向かってジャンボ機が離陸し、出発していく。

このとき、地上から手を振っている作業着姿の人たちを見かけることがありますが、これが航空整備士の皆さんです。パイロットや客室乗務員が表舞台のスターなら、航空整備士は舞台裏でスターを支える「縁の下の力持ち」的存在。この人たちなしには、旅客機は安全に飛行できないのですから「影の主役」ともいえるかもしれません。

たとえば日本の航空法では、一級航空整備士(国家資格)が航空日誌にサインをしないと、ジャンボ機が離陸できないことになっています。一級航空整備士がフライト前の機体を点検し、何も異常がなければサインするわけですが、この一級整備士が「旅客機が飛行にさしつかえない、安全な状態である」と認めなければ、整備が終わるまで何時間でも離陸を延ばすことができます。

旅客機は早く飛んでも、安全に飛ばなければ意味がありません。その安全を預かっている整備士は、強い権限か与えられているのです。

航空整備士になるには、数学や物理、化学といった知識も必要なのですが、実は最も重要なのは「英語」です。航空機は欧米で製造されるので、整備マニュアルはすべて英語で書かれています。日本人向けの翻訳本などはありませんし、マニュアルは膨大なページ数ですから、翻訳を依頼するのも困難です。

英語で書かれているマニュアルを、原文のまま読んで理解する力が必要となります。英語ができる人でも読むのに1年かかるようなページ数のマニュアルを自分の知識とし、実際の整備ができるようにならないといけません。

では翻訳ソフトで翻訳すればいいのでは?

そう思う方もいらっしゃるでしょうが、1億ページともいわれる膨大な文章を、いちいち翻訳ソフトで変換していたのでは、英語の勉強よりもたいへんな作業になってしまいます。翻訳ソフトに内蔵されている単語に、航空関連の専門用語が用意されていない可能性もあるのです。

それでむしろ「英語を覚えたほうが早い」ということになります。それに、そのマニュアルを読んで終わり、というわけではありません。航空整備士は航空機の基礎知識を学び、一般的な整備方法を知り、整備実習もしていくわけですが、さらに航空整備士の資格は「飛行機の機種ごとに違う」のです。これは、機長や副操縦士も同じです。

資格を取りたい飛行機の機種ごとに、新しくマニュアルを読み、整備ができるようになり、試験を受けて合格しなければ、実際の整備を担当することはできません。そうでなくても、空港の仕事は、担当が空でも地上でも、英語が欠かせないのです。整備に関する文書や資料は英語ですし、国際線の担当になれば、外国人の機長や整備士と会話できなければ、仕事になりません。

それに、単に「整備を学びました」というだけでは足りないのが、航空整備士です。宇宙飛行士は狭い船内で多くの人と関わって働く仕事なので、協調性があるかどうかが注目されますが、航空整備士も同じようなものです。整備仲間だけでなく、機長や乗務員など、旅客機には数多くの人たちが関わっています。その人たちと仲良く仕事ができるというのも、重要な要素なのです。

今すぐに整備すべき問題点なのか、後回しにしても安全なのか。そういう判断力も要ります。時には勇気を持って「離陸を中止する」と決断する精神力も必要です。その上、点検していて「何かおかしい」と理屈抜きで直感する力、航空整備士ならではの「職人の勘」を発揮できるようになれたら理想的、かもしれません。

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