ハブ空港「仁川空港」の利用客が減少、分散化へ

「ハブ空港」は国内線、国際線など路線の種類を問わず、あらゆる方面へ放射状に路線が展開している空港です。

空港が扱っている路線と、行きたい目的地との折り合いにもよりますが、「多少遠回りになっても、ハブ空港を経由するルートにしたほうが合理的」ということはよくあります。

アジア圏を代表するハブ空港の一つが、韓国の「仁川空港」です。アジア圏で同じ機能を持っている空港としては、中国の「上海浦東国際空港」、シンガポールの「チャンギ国際空港」、タイの「スワンナプーム国際空港」が知られています。

日本の羽田空港と成田空港は、どちらもハブ空港ではありません。空港としてのイメージも、実際の運航でも、「羽田空港は国内線に乗る空港」「成田空港は国際線に乗る空港」と二分されているため、ハブ空港とは考えられていないのです。

仁川空港は欧米に向かうのに便利なので、アジア圏のハブ空港の中でもとくに注目される存在でした。日本や中国の空港から欧米に向かうには、まず仁川空港を経由したほうが合理的。これまで仁川空港はそういう位置づけの空港でしたし、実際、アジアから欧米に向かう利用客のトランジットが非常に多い空港でした。

しかし、最近は仁川空港を経由するルートで欧米に向かう利用客が減り、その位置づけが変化しつつあります。日本と中国の国際線が強化されたためです。

日本の羽田空港はこれまで「国内に行くための空港」のイメージが強かったのですが、2014年3月、国際線の年間発着枠を6万回から9万回に増やしました。これまでの1.5倍です。

アメリカや中東、近隣のアジア諸国(北京・上海など)、東南アジア(シンガポールやバンコク)に向かう便は以前からあったのですが、これらを増便。ロンドンやパリ、ミュンヘンなどのヨーロッパ各国に向かう便を新設し、東南アジア方面ではハノイ、ジャカルタが新しく就航となりました。

これまで「日本から欧米に向かうには、仁川空港を経由するのがもっとも合理的」とされていましたが、日本の国際線が充実してきたので、そうとは限らなくなったのです。

2014年9月20日付の朝鮮日報にも「仁川空港、日本の利用客が急減」という記事が掲載されました。

仁川空港を運営する仁川国際空港公社の発表では、4月から8月までに仁川空港を利用した日本人客数が約39万人。前年同期は約43万人なので、客数にして約4万人、9.1%の減少となったのです。

空港利用者数のうち、日本出発は半数程度ですが、これも前年では約22万人のところ、約20万人となりました。客数で2万人あまり、10.9%の減少です。

これとは別に、日本で「日本から韓国へ向かう旅行者そのものが減っている」という統計が出ています。日本から欧米、オセアニア、中国への旅行者は増加傾向にあり、その一方で韓国が減少しているため、注目されたものです。

日本から韓国へ向かう旅行者の全体数は、2014年6月で約12万人。前年同月比11.9%減の数字であり、2013年4月からこういった前年割れが続いています。

また「中国から仁川空港を経由して、アメリカへ向かうルートの利用客が減っている」とも報じられました。2013年9月から14年2月にかけ、前年同期に比べ約5万人の減少です。

中国からハワイに向かう直行便が増加しているため、仁川空港の利用客数が減ったのが原因とされています。

これまで国内線をメインとしてきた「上海浦東国際空港」が、直行便の全体数を増やし、国際線を強化しました。「中国東方航空」が、2011年から上海とホノルル間の直行便を運航。増便するほどの人気となっています。「中国国際航空」も、2014年1月から北京とホノルル間の直行便を就航、同年4月から「ハワイアン航空」がホノルルと北京間の直行便の運航を始めました。

これまで仁川空港ルートだけに集中していた欧米への利用客は、これからは他の空港に分散していくかもしれません。

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