「A5」は飛行機所有に手が届く時代の旗艦機となるか

個人でジェット機を所有しているのは、日本では10人に満たないといわれています。

小型機ともなれば、それなりに数も増えますが、それでも飛行機の所有というとまだまだ敷居が高いというのが現実。

飛行機をコスト面でも操縦面でも少しでも身近にすべく、アメリカの企業が新たな飛行機を開発しています。

アメリカ・カリフォルニア州バカビルに拠点を置く航空機製造のスタートアップ企業であるIcon Aircraft社が、設計に8年かかった水陸両用スポーツ飛行機「A5」の販売を開始しました。

この水陸両用スポーツ飛行機「A5」は、重量1,000ポンド、翼幅34フィートで、スポーツカーとスピードボートと飛行機を混ぜ合わせたような乗り物です。

余分なものを一切省いたコントロールパネルは従来の飛行機のものというよりも、車のインジケーターに似ている感じとなっています。

10年の間、開発への期待が注がれる中、研究開発と厳しいテストフライトの末、ようやく発売に至ったとのことですが、Icon社にはすでに1,500件もの事前予約が入っており、その総額は4億ドルにのぼります。

また、現在は3年以内に注文に対応できるよう、飛行機の生産体制を強化している最中とのことです。

ニューヨークのハドソン川で行われた「A5」のデモンストレーションフライトで操縦を担当したのは、Iconの共同設立者で、元アメリカ空軍の戦闘機F-16のパイロットでもあるKirk Hawkins氏。

Hawkins氏は、2006年にスケートボードデザイナーのSteen Strand氏と共にIcon社を設立。

デモンストレーションフライトでは、Hawkins氏が操縦桿を引くやいなや、小さな2人乗りのA5がジョージ・ワシントン・ブリッジの上空1,000フィートに上昇し、時速100マイルでハドソン川の上空を南に飛行しました。

自由の女神像の周りを旋回し、ゆるやかにハドソン川に着水してフライトを成功させた後、「緊急事態を乗り切れる完璧なパイロットを探すのではなく、スピンしないような飛行機を作ったらどうか」「私たちの企業の根底にあるのは、真の航空機会社であるということです。

それが戦闘機のパイロットでも、コマーシャルパイロットでも、スポーツパイロットであっても、私たちは空を飛ぶことが本来あるべき姿を目指します、こうした飛び方こそ、全てのパイロットが子供の時に触発を受けたものなのです」と語っています。

「A5」の特徴は、なんといってもその手軽さと操縦性にあります。

スポーツパイロットのライセンスを持ち、19万7,000ドルの飛行機を買う余裕のある人でであれば、誰でも空を飛ぶことができるというのが売りだそう。

「A5」の離着陸には空港を必要としておらず、折り畳んでトレーラーにしまうことも可能。

コックピットの仕様についても、パイロットの職に就いている方以外でも読み取りやすく、操縦しやすいデザイン。

また「A5」は、FAA(アメリカ連邦航空局)によって抗スピン性能の認定を受けた初めて且つ唯一の飛行機とのことです。

抗スピン性能の技術は1980年代にNASAによって証明されていましたが、実用品としてFAAの基準を満たすことのできた企業はこれまでありませんでした。

Hawkins氏は「A5」開発の経緯について、このように話しています。

「どうして飛行機はまだスピンの問題に取り組んでいるのだろうか、と私たちは自問しました。緊急事態を乗り切れる完璧なパイロットを探すのではなく、スピンしないような飛行機を作ったらどうかと考えたのです」

「つまり、パイロットがミスをしても飛行機がカバーしてくれるということです。飛行機はあらゆる警告を伝えてくれるだけでなく、乗客が危険な状態にあっても飛行機はコントロールを失わず、墜落することもないのです。警告しながらもただ飛び続けてくれるのです」

この他にも、「A5」に搭載されている重要な技術としては、より安全で簡単な飛行を可能にする迎角のゲージがあります。

航空機産業では初めての装置で、失速の危険がある場合はこのゲージが教えてくれるようになっています。

Hawkins氏曰く、「ライト兄弟の2人乗りの自転車が、飛行機が生まれるヒントになりました。空を飛ぶことへ情熱を持った2人の企業家が、現在の飛行機の始まりになったのです」、世界を変えるような革新に必要なのは意欲を持った人間だけだとの考えをもっているそうです。

個人が飛行機を所有する時代がもうそこまで来ていて、「これから20年は、航空機の未来に大幅な変化をもたらすでしょう」とHawkins氏は語ります。

米メディアInc.が選ぶ「2014年の最も大胆な25の企業」に選ばれたIcon Aircraft社、今後の革新的な飛躍が期待されます。

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