轟音のなかでも、クリアで明確な会話ができるワケ

離陸すべき位置につくため、旅客機は滑走路をバックしたり、前進するのですが、この「バック」が問題です。旅客機ができるのは前進だけ。後退はできないからです。従って、専用のトラックで引いてもらったり、整備士に指示してもらったりして、所定の位置に移動します。

でもこの時、パイロットは旅客機の中にいるし、整備士は外にいるし、両方が旅客機のエンジンの轟音の中にいるのです。そんな中では、とても人が会話できるような環境ではありません。

実はこの問題を解消する、航空機専用のヘッドセットがあります。

へッドセットは、携帯電話のように、電波を使って会話する通信機器。マイクと、イヤフォンを内蔵したイヤーカップが一体化したものです。自動車の運転中に、携帯電話を持ちながらしゃべっては危険ですから、どうしても必要な人のために、携帯電話用のヘッドセットがあります。それと似たようなものです。

航空機用のヘッドセットは、フライトの安全と直接かかわる重要な会話をするための業務用ですから、エンジンの轟音のなかでも、すっきりと聞こえる、クリアな音声が要求されます。アメリカ空軍の評価テストでは、115デシベルの中で95%聞こえるそうです。普通はせいぜい80%です。

それと、周囲の騒音を抑える効果が抜群です。

ヘッドセットは通常、両耳を「イヤーカップ」でふさぐことで、周囲の音を耳に届かないようにします。それだけでなく「アコースティック・ノイズ・キャンセリング」技術といわれるものがあり、侵入してくる騷音に対して逆位相の音波をぶつけ、騒音を打ち消すのです。

それで、すぐそこでエンジンが動いていても、騷音をカットし、明確な会話ができます。オーディオ機器の会社が販売している音楽用のヘッドフォンにも、同じような機能が採用されています。こちらは会話というよりも、周囲の騒音に邪魔されずに、美しい音楽を聴くために用意された性能です。

マイクそのものにも騒音をカットする機能がついていたり、長時間でも快適に使用できる、すぐれた製品なのです。

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