フライトのエンディングは、もちろん機長の出番
ロサンゼルス国際空港への着陸もいよいよ終盤。ロサンゼルス・アプローチから「ロサンゼルス・タワー」と交信するよう指示されると、そろそろフライトのエンディングです。
ロサンゼルス・タワーから、滑走路に着陸してよいと指示されます。今の滑走路の風の向きや強さ、他の状態も教えてもらえます。
このころには高度は1000フィートを切っていて、カウントが100単位になっていきます。
オートパイロットも解除され、ジャンボ機が滑走路に停止するまで、すべて機長が手動で行います。
機長が「ランディング・チェック・リスト」をコールし、副操縦士はチェック・リストの読み上げを始めます。離陸時と同様、着陸時に必要なチェック項目を、もれなく慎重に点検していきます。
高度が100フィートまで下がった時点で、ジャンボ機自身が、自動音声による高度の読み上げを始めます。
ここまで高度の変化が細やかになってくると、副操縦士が高度の読み上げ、機長がそれに応じての操作では、やや出遅れるからです。人間だけでできないこともないし、つい最近までジャンボ機の着陸はそれで行われていたのですが、より正確を期したいということで、近年、自動音声が採用されたようです。
スタートは「ワン・ハンドレッド」
自動音声による高度の読み上げは、100フィートから始まります。読み上げはフィフティ、サーティと10単位、テンまで行われて終了です。
滑走路の表面に、ジャンボ機のギアが降りていきます。離陸して以来、ジャンボ機は上空という3次元空間を渡ってくるのですが、ここからは車と同じ2次元です。
ただし、滑走路を走る飛行機と道路を走る車とは、全く別。機体の速度は車とは全く違います。機体の形状が違うので、風に対する適応性も違います。
車輪が接地してまもなく、スラスト・リバーサーでエンジンの推力を逆向きにします。スピードブレーキ・レバーが自動で動いてスポイラーが起立し、これもブレーキングに作用します。車輪のブレーキそのものもかけていきます。
ジャンボ機にはブレーキとして使えるものがいくつかありますが、どれか一つだけで最後までブレーキングするのではなく、状況に応じて、複数の方法を並行して活用します。
滑走路が凍結している日、強い雨の日は、車輪のブレーキが効きにくくなりますから、そういう時こそスラスト・リバーサーの出番です。
天気がよい日に、ジャンボ機の速度がゆっくりのとき(飛行機の100kmは低速だそうです)にスラスト・リバーサーを使うと、地面に落ちている石や異物がエンジンに入りこみ、トラブルの原因となります。ですから、ジャンボ機の速度が時速110kmくらいになったら、スラスト・リバーサーは基本的にはストップ。
映画でスラスト・リバーサーを低速で思いきり使っているのは、緊急時なのと、物語だから。実際にはジャンボ機が停止して動かなくなるまでスラスト・リバーサーを使い続けることはできません。入り込んだ異物でエンジンを損傷する危険性があります。
スラスト・リバーサーを止めると同時に、ラダー・ペダルを真下に踏み込みます。尾翼の方向舵を操作するのに前方への踏み込みを行いますが、ここでやることはブレーキングです。
ラダー・ペダルを真下に強く踏むと、自動ブレーキが解除され、パイロットの意思と操作によるブレーキングまで、ワンアクションでできます。
自動ブレーキを解除したら、ブレーキングは最終段階。
ガツンとやって終わるか、ゆったり優雅にエンディングを迎えるか。ここは機長のペダル操作次第です。