実は黒くない!?ブラックボックスの謎と疑問

航空機事故の際に回収・分析され、事故の原因究明に使われたり、報道で話題になったりもする「ボイスレコーダー」。あまり飛行機に関心のない人でも、わりとよく耳にする言葉かもしれません。

正式にはCVR(cockpit voice recorder)といいます。

操縦室内のパイロットの会話や、無線による交信内容、客室アナウンスの内容などを録音しておくもので、30分間(ボーイング777の場合120分間)のエンドレステープを使用して、常時録音していて、常に最終の30分間(120分間)の記録が確保されるしくみです。

これとあわせて「フライトレコーダー」も事故調査の際に重要視される記録装置です。

こちらの正式名はFDR(flight data recorder)といいます。

旅客機の飛行高度、速度、エンジンに関するデータなどを、常に最終の25分間分、記録しておくことができます。これら「ボイスレコーダーとフライトレコーダー」の二つを合わせて、一般に「ブラックボックス」と呼んでいます。

事故や火災でも絶対に壊れない容器に入っていて、旅客機の製造過程におけるテストでは、1100度Cの高温にも30分間耐えられ、海水やジェット燃料のなかに48時間置かれても、水や燃料が侵入しないというのですから、たいへんな頑丈さです。

海上の事故を想定して、水深6000mの海底の水圧でも耐えられるようになっています。それに、ただ水圧に耐えられるというだけでなく、水中からブラックボックスが沈んでいる位置を知らせるため、超音波信号を30日間発信しつづけることができます。

旅客機内での置き場所にも、ひと工夫されています。衝突時などに最も衝撃を受けにくい、機体後部のトイレの上に置かれているのです。

ブラックボックスはこのようにさまざまな工夫があり、実際、1975年に搭載されるようになって以来、ただの一度も「ブラックボックスが事故のときに壊れた」という話はありません。

ちなみにブラックボックスは「黒い箱」だと思いこみがちですが、実はそうではありません。

「中が見えない」という意味でブラックボックスと言うのだ、と考える人もいるようですが、航空機に関して言われる「ブラックボックス」は、搭載されている機器全般を示す言葉です。ボイスレコーダーとフライトレコーダーは、数あるブラックボックスのうちの一部にすぎません。

それなのにこの二つがよく「ブラックボックス」という呼び方で話題になったりするのは、事故発生など、特殊な状況のときだけなのです。

それに、ブラックボックスは黒い箱ではなく、事故のときにすぐ発見できるよう、赤い塗料で塗られています。見た目には「レッドボックス」と言いたくなるような姿をしています。

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