羽田空港は利便性の向上で集客力アップ!その陰に隠れる成田空港の厳しい現状

2014年11月から、羽田空港の深夜早朝時間帯(夜11時から翌朝6時まで)の国際線の着陸料が割り引かれることになりました。首都圏の国際競争力強化や訪日外国人旅行者の増加に対応するためで、余裕のある深夜早朝の有効活用を目指します。

この時間帯に新規就航、または増便する国際線が対象で、割引率は1年目が50%、2年目は30%、3年目は20%となっています。

空港を利用する私達には着陸料が割り引かれてもあまり関係がないように感じるでしょう。

しかし違います。

羽田空港は国際線着陸料の割引に先立ち、10月26日から羽田と都心ターミナル駅などを結ぶバス5路線の実証運行を始めました。

こちらは2015年3月31日までで、羽田~銀座・東京・秋葉原、羽田~新宿・池袋、羽田~渋谷、羽田~大鳥居・蒲田・品川、羽田-横浜(YCAT)の5路線を、1日1往復運行します。

羽田発が午前1時台、羽田着が午前4時台と、公共交通機関が運行していない時間帯にバスを走らせ、羽田の利便性を向上させるのが狙いです。

着陸料が割り引かれ、深夜の時間帯までバスが運行すれば、航空会社にとっても、乗客にとっても羽田空港はますます利用しやすい存在となります。

一方で、成田空港の存在はかすむ一方です。国土交通省や航空会社は羽田をビジネス需要、成田は観光需要として両空港の住み分けを進めています。首都圏の需要規模を考えれば、2つの空港が十分共存できると考えているようです。

成田空港の戦略と問題点

羽田空港が充実していく中、成田空港はただ手をこまねいているだけでしょうか。

成田空港には、2012年から就航した国内LCC(格安航空会社)が首都圏では成田に就航しています。

羽田に発着枠の余裕がないという理由もありますが、主に観光客の利用が多いLCCでは、成田でも十分集客できると考えてのことです。LCCでの集積が今後の成田空港の新しい武器になります。

空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は、現在整備を進めているLCC用ターミナルを「第3ターミナル」と名付け、2015年4月8日に開業する計画です。NAAはLCCの誘致を積極的に進めており、今後完成する専用ターミナルも大きな売りにする狙いです。

ただ、この第3ターミナルはLCCにとって、とても良いものとは言い難いようです。

「第3ターミナル」の事業費は180億~200億円になるとみられ、簡素な構造を目指す建物の割には事業費がかかりすぎているとLCCは指摘しています。LCCは、200億円あれば180室のホテルが建設できると独自に調査し、「とても我々が支払える使用料は実現できない」とNAA側にコストダウンを求めました。

ところが、その後も劇的なコストダウンができたという話はでていません。

さらに、NAAはこの第3ターミナル開業日の発表と同時に、ターミナルロビーなどの整備や維持費用に充てるとされる「施設利用料」徴収対象を拡大すると発表しました。これまでは国際線の利用者だけから徴収していた施設利用料をLCCを含む国内線の利用者にも負担させるとしたのです。

LCCターミナルで国内線を利用する場合、施設使用料は1人につき1便ごとに大人380円・子供190円です。

国際線では、出国時が大人1020円・子供510円、乗り継ぎ時が大人510円・子供250円で、さらに旅客保安サービス料を大人・子供とも共通で520円を上乗せし、従来は徴収していなかった第1と第2ターミナルの国内線利用者についても、大人440円、子供220円を新たに徴収します。

ちなみに羽田の国内線ターミナルも施設利用料を徴収していますが、大人1人当たり290円です。
2014年4月1日から170円→290円に値上げしていますが、消費増税や施設の拡張によるものです。
羽田空港は、深夜の着陸料を割引き、それに伴うアクセスを整備しているにも関わらず、成田空港は羽田空港よりも高い施設使用料となります。現在建築中の第3ターミナルはLCCターミナルです。格安の航空会社に高い使用料・・・利用者はどのように感じるのでしょうか。

ANAホールディングスの100%子会社LCC、バニラエアの石井知祥社長は11月2日、成田~香港線を就航させました。ただ、「まだまだアクセスや使い勝手の問題がある」と、開業までに改善の余地があると指摘しています。「我々も(ターミナル使用料などを)交渉中。サポートをお願いしたい」と、使用料の引き下げを求めています。

また、成田を拠点とするジェットスター・ジャパンも施設使用料の値引をNAAに交渉しています。「施設利用料は各社が交渉しているが、やっと下がったといったところ」と幹部は打ち明けています。

施設利用料は、成田に限らず空港の施設が拡張されると金額が増額される傾向にありますが結果的に、羽田より高い利用料を請求すると発表するところに、NAA側と航空会社や乗客の感覚に、ズレがあると言わざるを得ないでしょう。

成田空港への不満

国土交通省の幹部は「NAAは時代の変化を受け入れない。我々役所以上にお役所体質だ。国側にも歴史的経緯の責任があったのは確かだろう。だが時代の変化の変化に合わせて経営するのは空港会社の役目ではないのか」と嘆いています。

また、各LCC首脳は、NAAに対し、

「日本で最もLCCに対して非協力的な空港会社がNAA」
「結局、口先ではLCCを誘致すると言うが、本音では我々を相手に商売をしたくないのでは」
「LCCを誘致すると言いながら、“お客さん”でもあるLCCを見下すような態度は許されない」

などなど、不満は噴出しています。先の国土交通省の幹部によると、「NAAとしては、大手がニューヨーク便やロンドン便を飛ばすのが成田、というプライドがあるのだろう」と分析しています。そんな高い所にいて現代の航空会社・利用者のニーズに応えられるのか、甚だ疑問です。

ただ、LCC成田便を運航するうえで課題となるのが離発着制限(カーフュー)です。

2013年3月からは午後11時台の離着陸が認められるようになりましたが、午前0時台から早朝5時台は、地元住民の騒音軽減のため緊急時ややむを得ない場合以外、成田には離着陸できません。
それがLCCが成田の就航に難色を示す理由の1つでもあります。

もちろん、深夜早朝時間帯の利用を実現するには、地元の理解を得る必要があります。それはNAA単独では実現できず、地元自治体との連携や、地元住民の理解が何よりも重要になってきます。

成田の使いづらさの原因全てがNAAによるものではないでしょう。ですが「離発着制限があるから」と木で鼻をくくったような対応をしていては、航空会社も乗客も離れてしまいます。

成田空港のこれから

羽田にはエアアジアXなど、一部の国際線LCCがすでに乗り入れています。この先、国内線LCCが羽田に就航するのも時間の問題でしょう。改めて羽田が存在感を増す今、成田はいかに生き残るつもりなのでしょうか。

「最後は国が何とかしてくれるという甘えを随所で感じてしまう。時代が変わったのだから、もっと主体的に経営してもらいたい」との国土交通省の幹部の言葉からもわかるように、このような経営手法を取り続けていれば、この先成田空港はどのような末路を遂げるのか、目に見えるようではないでしょうか。

成田と言えば、国際線ターミナルの豊富な免税店など、充実する商業施設に大きな魅力があります。例えば短距離国際線を活用して、成田の出国エリア内の免税店を回るツアーを企画するなど、今あるリソースを生かしたビジネスはいくらでもあるはずです。

「国が何とかしてくれる」という甘えの意識からの脱却

「世間に向けては着陸料を下げましたとアピールする。ところが、気がつくと航空会社の入るオフィスの賃料は値上げされている。何かを値下げした分は、別の何かを値上げして必ず取り戻す」と、大手航空会社のOBは話しています。

航空会社は、空港を利用しなければ飛行機を飛ばすことができません。

この大前提から多くのお金を取り、高い所から経営するのではなく、利用する航空会社・利用者により利用しやすい空港になるよう運営し、そこから派生する商売を繁盛させることが航空会社・利用者・果ては自分たちにとって良い経営となり、第三セクターとしての本来の役割を果たすことになるのではないでしょうか。

成田空港のこれからに注目したいですね。

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