温暖化などの影響でフライト時間が伸びる!?

将来的に太平洋を航行する便の平均フライト時間が少し長くなるという興味深い研究が発表されています。

「Nature Climate Change」で発表された新しい研究論文において、ホノルル~ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル・タコマ国際空港の結ぶ3路線、合計約25万便のフライト時間の変動を解析、巡航高度での風の観測の記録と比較したデータによる風のパターンの影響が明らかにされています。

ウッズホール海洋研究所のKristopher Karnauskas氏は、「北太平洋上の風のパターンの変化は、フライト時間に影響する大きな要因の一つ」と指摘しており、フライト時間が延びることにより、燃料の使用量が増え、更にはCO2排出量も増えることとなります。

太平洋赤道域の気温の昇降のように、大気波動は北半球と南半球の双方により高緯度に送られています。

これらの空気の循環パターンに影響を与える主な要因としては、エルニーニョ・南方振動(ENSO・3年~5年以内に起こるとされているインドネシア付近と南太平洋東部で海面の気圧が連動して変化する自然現象)にあるといいます。

さらに、34の全球気候モデルを用いて、温室効果ガスによる気候強制に対する巡航高度での風の応答を計算、これらのモデルの半数において、ジェット気流の出口部がハワイと米国大陸を結ぶ回廊に向かって広がることが予測されたそうです。

乗る側にとっては、数時間のフライトが数分延びても大した問題ではないし、そもそも知らなければ気づかずに過ぎてしまうことでしょう。

しかしながら、航空会社にとっては大きな痛手となるようですし、環境問題にも大きな影響が出そうです。

ワンフライトあたりでは数分の飛行時間増加でも、年間に換算すれば相当量の時間増となります。

Karnauskas氏らの計算によれば、アメリカで航行する3万もの往復便のフライト時間が毎日各便1分ずつ増えるとすると年間30万時間のフライト時間の増加となり、追加消費するジェット燃料は1億ガロンに達するとの計算になります。

燃料費にすると年間約140万米ドル(約1億6,800万円)増、これに加えて、CO2排出量も年間460万kg増えることになるそうです。

この460万kgという数値を全世界の民間航空会社に当てはめて考えると、人間の活動による全世界のCO2排出量が0.03%増加する可能性があるというのです。

今回発表されたフライト時間の増加の一因が温室効果ガスの影響にあるのであれば、私たちの日常生活での努力によって、もしかするとCO2排出量の増加を抑えることができるのかもしれません。

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