国内企業が社運を賭ける世界の航空機需要増
ボーイングやエアバスなどの世界の航空機メーカーの生産する航空機に、主翼をはじめとする日本国内で製造する部品が使われていることは知られていることです。
そして、ボーイングのB787増産計画に伴い、日本の航空機関連企業も追加投資を決定もしくは検討しています。
今年3月には川崎重工が名古屋第一工場内に工場を新設することを決定し、三菱重工業も2014年8月に複合材主翼関係の部品を製造する下関造船所と名古屋航空宇宙システム製作所大江工場の設備増強を行い、2016年からの増産を目指しています。
B787に炭素繊維を供給している東レでは、増産計画対応のため、2014年9月に石川工場の炭素繊維加工に使用する生産設備の導入を決定。また、同機のギャレーやラバトリーを生産しているジャムコも、新潟県に増産対応のための新工場建屋の建設を予定しており、各社とも生産体制を整えるべく準備を進めています。
初の国産ジェット旅客機のMRJ(Mitsubishi Regional Jet)やホンダジェットも飛行開始となることから、今後も航空機需要は増加し、航空機製造業の中での日本企業の必要性は確固たるものとなっています。
日本航空機開発協会によると、2013年の時点で世界で運航されている20席以上のジェット旅客機は19,208機ですが、20年後の2033年には1.9倍の36,796機に増加するという予測が出ています。
中でも、B787を含む230座席~309座席の航空機については、2013年は1,808機ですが、20年後の2033年には2.5倍の4,561機に膨れ上がると予想されています。
というのも、従来採算が合わないとされていた成田-ボストンなどの中需要の長距離路線に対して、最新の低燃費の特徴を活かした機材を導入することにより航空機の市場が拡大され、今後も運用を始めるエアラインが増加するものとみられているのです。
B787の部材や部品は多くの日本企業がその製造を担っていて、供給率の約3割にもなるといわれています。
例えば機体のボディ部分に採用されている炭素繊維複合材では東レのほかに、住友化学が炭素繊維複合材の強度を高める樹脂を提供しています。
主翼関連では、川崎重工や三菱重工業以外にも、新明和工業が主翼の桁に携わっていますし、電装品ではリチウムイオン電池をGSユアサ、機内エンターテイメントサービスにパナソニックが携わるなど、日本企業の部品供給率は35%にのぼり、ボーイング本体の担当分と同じ比率にまでなっているのです。
従来の日本の航空機製造業はボーイングなどへの供給に留まっていましたが、三菱重工業の子会社である三菱航空機のMRJやホンダのホンダジェットの開発により、更なる発展のステップに入っています。
しかしながら、開発におけるサプライヤーの参画度合いは海外の航空機メーカーのケースとは対照的なものとなっているようです。
MRJでは、サプライヤーを積極的に参加させてともに開発を行うというアプローチを取っているそうです。
三菱重工業の発表によると、エンジンはアメリカのPratt&Whitney社、油圧システムに米パーカー・エアロスペース社、電源や空調などの各制御システムには米ハミルトン・サンドストランド社、フライト・コントロールシステムには米ロックウェル・コリンズ社とナブテスコ、降着システムには住友精密工業を主要サプライヤーに選定、協力開発するアプローチを取っています。
一方で、ホンダジェットは胴体、エンジンともにアメリカで独自開発を行っており、エンジンはGEとの合弁会社であるGEホンダ・エアロエンジン社製を使用しています。
日本のサプライヤーでは、降着装置を石川県の高林製作所が担当していすが、裾野への広がりという点ではMRJの方が影響力が大きいものといえるでしょう。
B787やMRJは中型機や小型機に分類されており、今後の航空機のニーズとしてもこのクラスの規模の航空機市場が大きく伸びていくものといわれています。
また、ボーイングが次世代大型機として開発中のボーイングB777xについても、多くの日本企業が参画する見通しとなっていて、日本企業参画率は機体生産の約21%で現行のB777とほぼ同水準になる想定です。
B777xの月産台数が777以上となるとの見通しで、これに伴う日本企業の生産量増大に期待が高まっています。
また、エアバスの超大型機A380にも、床下・垂直尾翼の部材担当として東邦ナテックスをはじめ、ジャムコ、住友金属工業、東レなど20社近くが参画しています。
そして、中でもボーイングとエアバスが独占している中大型ジェット機の製造に炭素繊維を納入している東レが、航空機周辺産業のなかでも突出して重要な企業といえるでしょう。
日本企業が世界の航空機の製造を支えているといっても過言ではなく、当然のことながら技術力や正確性などが認められ、その多くが世界的な航空機メーカーの重要なサプライヤーとなっているということは言うまでもありません。
今後も拡大する世界の航空機製造産業へ日本企業がその技術力をもって航空機開発に参画し、航空機の更なる技術革新につながっていくことが期待されます。