空の交通整理:航空管制管とは?

子供の頃、パイロットや客室乗務員になりたいという夢を持っていた人も多いのではないでしょうか。もちろんパイロットは飛行機を直接操縦することができ、客室乗務員は直接お客様に接し、旅のサポートをしてくれる、憧れの職業です。しかし、飛行機はパイロットや客室乗務員の力だけで安全に運航しているわけではありません。

整備士や特殊車両などの力も借りて運航されています。

その、見えないところで航空機の運航を支えている職業の一つに、航空管制官というものがあります。最近ではこの航空管制官にスポットをあてたドラマが放送されたので、この職業を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

では、この航空管制官はどのようなものでしょうか。

航空機が安全に飛行できるように、レーダーや無線電話などを使って、地上からパイロットに情報や指示を送っているのが、航空管制官です。飛行場内の航空機や滑走路、特殊車両などを監視し、航空機に離着陸の許可や方法を指示する飛行場の管制業務が主な仕事です。

そのほかにも、空港周辺の空域にいる航空機に、進入や出発の順序、経路、上昇などの指示を出す進入管制業務や、監視レーダーなどを使って着陸する航空機に高度とコースを指示し、誘導する着陸誘導管制業務などがあります。

大空を見上げると、「飛行機なんてどこを飛んでも問題ないんじゃない?」と思われるかもしれません。しかし、2~3分に一度は飛び立っている飛行機の間には、到着機も次々とやってきます。

実際、記憶に新しいと思いますが、航空機同士が異常接近して乗客57人が重軽傷を負った事故がありました。

この事故で国土交通省東京航空交通管制部の指導担当管制官と管制官が起訴され、第1審の東京地方裁判所判決は無罪でしたが、2008年4月、東京高等裁判所は一審判決を破棄し、指導担当管制官を禁錮1年6ヶ月・執行猶予3年、管制官を禁錮1年・執行猶予3年とする有罪判決を言い渡しました

両被告人は、禁錮以上の刑が確定したため国家公務員法により失職しています。

このように、ひとつタイミングを間違えれば大事故につながりかねません。そうならないように、飛行機が安全に飛べるように、また、離着陸できるよう誘導し、仕切るのがこの航空管制官なのです。

職場は管制塔の最上階にある「コントロールタワー」と、管制塔直下にある「レーダー管制室」の2ヶ所です。コントロールタワーは360度ガラスに囲われ、主に目視で飛行機の離着陸などを指示します。そしてレーダー管制室ではレーダー機器を使いながら、上空の飛行機を安全で最短の距離を通って空港につけるよう誘導します。

この管制塔は背の高い建物で、空港へ行くと必ず目に付きます。お客様を乗せた飛行機は誘導路という道を通って滑走路へ向かいますが、飛行機はとても大きいため、パイロットは後ろはもちろん、周りがとても見づらいのです。そのため、ほかの飛行機が見えず、翼をぶつけてしまうこともあるかもしれません。もちろん、前に進むときや、曲がるときにも危険が沢山あります。

そこで管制官が、高い管制塔の上から見て、飛行機のまわりの安全を確かめ、動きだすタイミングを決めたり、飛行機同士が邪魔をし合わない進み方を考えたりして、パイロットに無線で知らせます。

そして、飛行機が誘導路を通って滑走路へ向かい、離陸や着陸をしますが、そのときの速さは時速250~300kmにもなります。そのような状態のときに、ほかの飛行機が滑走路に入ってきたら非常に危険です。そのため、飛行機は管制官に許可をもらわなければ、離陸や着陸をしてはいけません。

このように、管制官はそれぞれの飛行機の位置をよく考え、できるだけ待たされる飛行機が出ないように、離陸や着陸の順番を考えます。

そして飛行機が飛び立ったら、好きなように飛んでいいわけではありません。空には「航空路」という飛行機の通り道が決められていて、一方通行のものがあったり、飛んでもいい高度が決められていたりと、地上の道路と同じように交通ルールがあります。

しかし、空に信号や道路標識をつけるわけにはいきません。

そこで、その役目をするのも管制官なのです。

空港には空港用レーダーや、航空路用の大きなレーダーがあちこちに設置されて日本中の空をカバーしています。また、レーダーの電波が届かない海の上でも、衛星通信を使って飛行機の位置がわかるようになっています。

そして、レーダーの画面を見ると、空港から100kmくらいのところにいる飛行機の位置が全部分かるようになっています。

管制官はこれらのレーダーを使い、交差点でぶつかりそうな飛行機がいたら、前もって高度を変えたり、回り道をしたりするよう指示をだしたり、速い飛行機が遅い飛行機を追いかけていたら、スピードを落とすように指示をしたりします。

このように、飛行機が出発してから到着するまで、空港にいる管制官と、航空交通管制部や航空交通管理センターで、各セクターを受け持つ管制官が見守っています。

また、管制官には、ほかにも多くの仕事があり、「フローコントロール」もその一つです。今、日本の空には、1日あたり7,000機以上もの飛行機が飛んでいます。たくさんの飛行機が、ある空港やセクターに一度に集まってしまいそうなとき、その空港やセクターへ向かう予定の飛行機の出発時刻を遅くしてもらったりして混雑を防ぐのが「フローコントロール」です。

また、空の安全を守るためのルールづくりをしている人、レーダーなどのシステムを開発している人、管制官になるための学校の先生をしている人もいます。

飛行機を飛ばしているのはパイロットだけではなく、どう飛ぶのかを決めるのは管制官で、空の安全を守るとても大切な仕事です。

このような仕事をしている航空管制官は国土交通省に所属する国家公務員で、その数は全国で約1900人(19年4月)います。女性の航空管制官も少しずつ増えてきており、だいたい全体の4分の1から3分の1程度を占めているそうです。平成23年度の採用試験では、受験者数1609人のうち女性は498人、合格者数は76人のうち女性30人となっています。

勤務地は主に全国の空港と、国内4ヶ所にある航空交通管制部(札幌・東京・福岡・那覇)です。

空の過密化と飛行機の高速化は年々進んでおり、空の安全と秩序を守る航空管制官が担う役割はこれからますます重要になっていくと考えられています。さらに、全国に4か所ある航空交通管制部では、日本列島周辺の空を監視して、飛行中の航空機を管制しています。

管制官の仕事がうまくいったということは「なにもなかった」ということです。そのため、管制官の仕事はなかなか分かりづらいかもしれませんが、安全で快適な空のために、みなさんが飛行機に乗ってから降りるまで、いつでもしっかりと見守ってくれています。

関連記事

ページ上部へ戻る