出入国審査で「おもてなし」東京五輪に向けて、出入国審査の効率化を・・・

日本を訪れる外国人は、昨年、1000万人を超えました。東京五輪が行われる2020年には、2000万人を超えることが期待されています。それを受けて、法務省は「出入国審査」の効率化を進めています。

出入国審査をスムーズにするものとして、最も期待されているのが「顔認証」です。東京五輪にあたって、実用化がより急がれています。「顔認証」の技術開発は1970年代に始まったもので、いまや日常的なものとなっており、私たちに身近な駅やテーマパークでも、顔認証が採用されるようになりました。

たとえば、JR東日本の駅には、「おすすめ商品」が表示できる自動販売機が設置されています。おすすめ商品の基準となるのは、内蔵カメラで撮影した、客の顔の認識データです。非常に身近になったために、むしろ問題点が指摘されているほどです。「自分の知らないうちに撮影されてしまうかも」という不安を持つ人が多くなりました。

今年の春にはJR大阪駅で、顔認証で通行人を追跡する実験の計画が延期になっています。プライバシーの侵害であると批判されたためです。

プライバシーの問題に詳しい大学の教授からは、次のような指摘が出ています。

「撮られる側にとっては、写真の利用方法やデータの流出といった不安がある。写真データの蓄積や、別の用途に利用しないことを明確に示すことが欠かせない」この指摘を受けて、法務省は「空港の顔認証で集めた写真のデータは別の用途には使わない」としています。

空港での「顔認証」は、日本ではまだ運用されていませんが、イギリス、ドイツ、オーストラリアなどでは、すでに採用されています。

まず、あらかじめパスポートのICチップに、旅行者の顔の画像情報を記録しておきます。空港の出入国審査ゲートを通過するときには、機械にパスポートをかざします。

次は、空港のゲートで旅行者の顔写真を撮影。

このときの撮影は、顔の正面から行います。目や鼻、口などの位置、互いの距離を測定するためです。非常に細かい数値を、何種類も、正確に測定していきます。そして、IC旅券に記録された顔の情報と、空港で撮影した顔写真の情報を照合することによって、間違いなくパスポートの本人と確認できます。

顔認証を採用すれば、すべての測定や照合を機械で行い、たくさんの人手がなくても、出入国審査を効率よく行えるようになるのです。

一方、日本の空港ではまだ「顔認証」は行われておらず、実験の段階です。

まもなく羽田空港と成田空港で、顔認証の実証実験が行われます。機械を試験的に空港で使ってみて、実際の業務に活用できるかどうか、テストするものです。今回の認証実験に参加するのは、法務省の委託を受けた国内外のメーカー5社。職員1人で審査しているスペースに、機械を2台置いて行うそうです。

顔認証が実用化された場合、日本人だけを対象として行う予定です。日本人の審査を自動化すると、外国人の審査をする職員を人数を増やすことができ、出入国審査全体のスピードが上がるからです。

そこで、実証実験でも、日本人旅行者に限定して実験に協力してもらいます。2万5千人分のデータを集めたいとしているそうです。

実は、このチャレンジは二回目のものであり、リトライとなります。

法務省はかなり以前から顔認証の実用化を目指しており、2年前にも同じ両空港で実証実験をしています。ただ、その時には17%の誤認識となってしまい、実際への業務に導入することは困難と判断されました。しかし、現在のメーカーの技術は、大きく向上しており、実証実験の成功が期待されています。

NECは2010年に、米国の国立機関主催の製品テストで「世界一の精度」と認定されました。160万人の写真に対して、エラー率は0・3%。世界各国の他メーカーを大きく超える好成績です。

香港の出入国審査に採用され、日本のユニバーサル・スタジオ・ジャパンの入場ゲートにも使われています。

東芝は、顔の部位ごとの明るさを細かく数値化することを得意としています。明るさの数値化ができると、目、鼻、口などをより素早く見分けることが可能になるのです。日本のパスポートは10年間有効なので、その期間内に人間の顔つきが変化していきます。両社とも、その間の人間の顔の変化まで認識できる精度だそうです。

法務省では、2018年度の運用開始を目指しており、顔認証に対応したIC旅券は、実証実験の終了を待たず、2006年から発行が始まっています。これは、実際の顔認証の運用が始まったときに間に合わせるため。旧型旅券の更新が終わる2015年には、全ての旅券がIC旅券、つまり「顔認証対応」になる見込みです。

写真を撮られるのは好きではないという人も多いため、法務省入国管理局は、顔認証を義務化していません。従来どおりの審査官による対面手続きも行うので、顔認証を希望しない、これまでと同じ方法で審査を受けたい旅行者も安心してほしいとのことです。

また、顔認証ではありませんが、認証を指紋で行う「自動化ゲート」が、成田、羽田、中部、関西の4大空港で、すでに導入されています。昨年の利用者数は約130万人で、利用可能な人のうち、実際に利用した人はわずか4%でした。指紋の事前登録が必要ですが、あまりイメージが良くないため、抵抗を感じる人が多いようです。

法務省は、東京五輪にあたり、出入国審査を効率よく行うことも「おもてなし」につながるとの考えから、さまざまな方法で効率化を目指しています。

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