常に最大推力である訳ではありません

旅客機は、いつも最大推力で離陸や上昇を行っている訳ではありません。ここでは、その理由について見ていきます。

機体のカタログに記載されている最大離陸推力は、ICAO(国際民間航空機構)が定めた、ISA(国際標準大気)である外気温15度、1気圧のもとでの値です。ですが常に気温と気圧が15度と1気圧であるとは限りません。そのため、仮に外気温が30度ならば、標準気温より15度高いということを表示するため、ISA+15度と表します。

ISA+15度を超えてしまうと、タービン口の温度により、離陸推力が制限、いわゆるフルレイトの状態になって、カタログデータより小さい推力になってしまいます。

これは、最大上昇推力や最大連続推力でも同じで、上空の気温次第ではフルレイトになり、それぞれの推力はカタログデータ通りには出ません。

逆に考えると、エンジンの出力を絞っていれば、タービン口の温度が低いまま運用することになり、それがエンジンの寿命を延ばし、また整備コストを下げることに繋がるのです。

そのため、特に国内線の機体の場合が多いのですが、機体があまり重く無い場合や、滑走路が長い空港の場合は、最大推力を数%から25%ぐらいまで減じた減格推力(ディレイト・スラスト)の状態で離陸します。

整備コスト以外にも、旅客が急速な加速による不快感が覚えないようにするメリットもありますので、頻繁に使われている方法です。もちろん、減格推力であっても、基準以上の推力を維持できていますから、心配はいりません。

また離陸推力だけでなく、上昇推力にも減格推力を使っている場合があります。

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