ロボットによる自動操縦は航空機事故根絶の切り札となるのか

2015年3月24日に発生したドイツのLCCジャーマンウィングスの9525便墜落事故は、乗員乗客含め150名もの命が失われたというだけのみならず、その原因が精神疾患をもっていた副操縦士による人為的なものであったことでも非常に衝撃的でした。

理不尽に奪われた無辜の命の重さを思うと哀悼の意を表さずにはいられません。

このような事故を起こした副操縦士は許されるべきではありませんが、LCCのコスト削減による薄給と激務が精神負担になっていたらしいということを聞くと、一片の同情とともに、会社にも責任を帰すべきであるという思いもあります。

日本ではパイロットの精神チェックは厳格化されています。しかし、専門家によるとそれでもこのような事故が再び起こることを100%排除するのは難しいといいます。

そのリスクへの対策として「ロボットと自動運転」が答えの一つではないかというある人物の意見を読み、呆れるとともに失笑を禁じえませんでした。まるで、昭和の児童誌に掲載されていた希望あふれる「みらいのしゃかい」のような楽天的を通り越して脳天気な考え方です。

この人物は30年前にはインターネットがなく、それに関する仕事もなかったが、今ではネット社会やそれに関わる仕事があるように、未来には機会化とロボット化が進むだろうとした上、飛行機などの運転は機械化と相性がいいと述べています。(ちなみにインターネットの基礎となるネットワークは1969年にアメリカの大学で構築され、30年前の1985年には学術用ネットワークが構築され、1988年には商用インターネットが提供されています。せめて50年前としておけばボロが出ることはななったでしょう。)

しかし、現在の旅客機はその操縦のほとんどは既に自動化されています。現在パイロットが手動で行っているのは離陸のみ、あとは着陸まで含めてほぼ自動で行われています。

そして重要なのは、今回のジャーマンウィングの墜落は、オートパイロットシステムが高度に発達したため、以前はパイロット2名に加えて機関士や航空士を含め4人体制だったものが、現在では正副の操縦士2名だけで操縦が行われているため、副操縦士が操縦室を占拠しやすかったことも原因であると指摘されていることです。

では、ロボット操縦による完全無人化とすればいいではないかというと、そう単純なものでもありません。

例えば、2015年の4月5日に、着陸態勢に入った飛行機の前に予定外の車両がいたために、パイロットがとっさの機転で再離陸して大きな事故を免れたという「重大インシデント」が日本の徳島空港で発生しました。ロボット操縦でこのようなイレギュラーに対応できるでしょうか?

フライト中でも、天候の変化などによってパイロットの手動操縦に切り替えなければならない場面もあります。

オートパイロットが非常に発達した今でも、2名のパイロットが搭乗しているのは必要だからです。それとも、30年経つとそうした人間の判断が要求されることまで判断できるようになるAIが開発されるとでも言うのでしょうか?そうとは思えません。

もちろん、「ロボットと自動運転」論を述べた人物も、それによってリスクがゼロになる日は来ないと言い訳的に付け足してはいるのですが、もっと「現実」を知ればそのような幼稚な夢を見るよりも、いかに乗務員のケアを徹底し、LCCのような無理な「薄利多売」を見直すほうが大切であることがわかるでしょう。

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