地方空港も『ローコストキャリア?』

ヨーロッパでは、LCCが就航した田舎の町に活気が溢れるようになった、というところは少なくありません。

日本でも格安航空会社LCCに目をつけた地方もあります。

例えば茨城空港。2010年3月11日に茨城空港ができたのですが、実はこの茨城空港はLCCのことを視野に入れて作られており、コンセプトは「ローコストキャリア」です。

この茨城空港は、首都圏の第三空港的な位置づけです。東京からはかなり離れているので、国内の大手航空会社は今のところ就航していません。

そのため、国内線としてはスカイマーク、国際線では中国の春秋航空の2社が茨城空港に乗り入れています。

スカイマークの路線は茨城~札幌と茨城~神戸、季節運航として茨城~那覇、中国の春秋航空が茨城~上海線を就航させています。

格安航空会社LCC以外では、アシアナ航空がソウル(仁川)線を就航させていましたが、東日本大震災の原発事故があってから、残念ながら2011年3月以降、運休しています。

便数も、スカイマークは茨城-札幌線が現在1日2便、春秋航空についても、週2便しかなかったのが週5便に増えています。便数が増えたということは、それなりに乗客が増えた証拠です。

実際、2010年度は21万人ほどだったのが、2011年度は上半期だけでも13万人ほどになり、搭乗者数は増加傾向にあります。状況により増便もありえますし、他の路線が増えることもあります。

ここで注目したいのは、その料金よりも日本の発着空港が茨城だということです。なぜ、日本の玄関口である成田や羽田ではないのでしょうか。開港間もない茨城空港のPRのため、というのもあるかもしれませんが、それよりも重要な理由があるようです。

航空会社は、駐機料や離発着料など、自社の飛行機が乗り入れする各国の空港に規定の利用料を支払わなければなりません。特に、膨大な建設費や経営コストを背負った成田空港や関西国際空港では、同じ機種でも香港やニューヨークの約2倍、ソウルやパリの約3倍、そしてフランクフルトにいたっては6倍近い差があるといいます。

そうであれば、豊富な資金力を持つレガシーキャリアでなければ、成田に頻繁に離着陸できませんし、もしくは運賃を上げなければならなくなります。これではLCCの価値はなくなります。

そこで目をつけたのが、空港利用料の安い首都圏の第2、第3空港的な地方空港だったのです。

春秋航空が運行をはじめた頃、茨城空港に降り立った中国人は、そこが東京ではないと知って愕然とした、という話もありましたが、都心へのアクセスさえ確保できていれば、地方空港でも問題ないでしょう。時間もお金もかかる成田空港と、あまり変わらないんじゃないでしょうか。

実際、茨城空港には、東京駅からの直行バスが運行されています。これを利用すれば、東京駅から80分で空港まで到着できますし、飛行機利用者は500円と、格安です。このバスを使えば東京へのアクセスは羽田や成田と遜色はありません。

需要があり、かつ供給が可能だとなればさまざまな面でも変革が起こるでしょう。フランスのシャルル・ド・ゴール国際空港やシンガポール・チャンギ空港のように、テナントやサービスを極力カットしたLCC専用のターミナルを増設する国も増えています。

安全性を掲げ、規制の上にさらに規制、で既得権益を保護してきた日本の航空事業も変わるかもしれません。そして、なによりも私たちの旅のスタイルも変わっていくのではないでしょうか。

わざわざ東京に出てきて、次に成田に移動して、さらに何時間も待機しなくても、自宅から車で空港に乗り付け、しかも新幹線よりも安く海外に行けます。

4時間までのフライトなら、LCCを選ぶ人が多いのではないでしょうか。そしていつか、「今度の週末は香港で飲茶しない?」とか「今週末はみんなで韓国で焼肉パーティする?」ということにもなるかもしれません。

短期間の旅行なので荷物は機内持ち込みサイズのキャリーバックが一つあれば十分でしょう。また、コンパクトなLCC用のターミナルなら、入国手続きのパスポートチェックや空港内の移動で時間を取られることもありません。

国内旅行と同じくらい気軽に、もしかするとそれ以上に経済的に海外旅行が楽しめるようになるのではないでしょうか。

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