どれだけ機械が便利になっても使う人間はミスをするという現実

1992年1月20日、フランスの山中で87名もの命が失われた、痛ましい飛行機の墜落事故がありました。

墜落したのは、フランスの航空会社・エールアンテール社の148便。フランス南東部の都市・リヨンから、北東部のストラスブールへ向かう国内線でした。

ストラスブール国際空港に接近した148便は、着陸態勢に入って左旋回している途中、空港の南西16kmにある山に追突しました。事故発生時間は午後7時過ぎ。すでに周囲は暗くなっていました。山の中腹に雲がかかっていて、視認性は悪かったものの、飛行制御ユニットで安全に着陸できるはずでした。

この148便は、民間の旅客機としては初めてコンピュータ制御が導入されたハイテク飛行機・エアバスA320。事故後の調査では、機体やコンピュータの制御システムには何ら異状が発見されず、最終的には着陸時にパイロットが数値を入力ミスしたことで発生したパイロットエラーであったと結論付けられました。

エアバスA320の飛行制御ユニットは、着陸時の降下角度と降下率(着陸時に降下していく1分ごとの高度)を一つのスイッチで切り替える設計になっていました。148便のパイロットは、降下角度モードになっているつもりで「33」と入力したところが、実際は降下率モードになっており、毎分3300フィートの降下率となったために、本来は上空を通過するはずだった山へ向かっての急降下になってしまったものと推測されています。

なお、本来あるべき降下率は毎分800フィート(約250m)でした。つまり、4倍以上の急降下であったことになります。

機械やコンピュータを操作する時に、機械やコンピュータと人間の間の仲立ちをして、人間の指示を伝える役割をするものを「ユーザーインタフェース」と言います。例えばwindowsはアイコンなどのグラフィックを表示してそれを人間が操作することによりコンピュータを動かす「グラフィックインターフェース(GUI)」というユーザーインタフェースです。

銀行のキャッシュディスペンサーで暗証番号などを入力するタッチパネルもユーザーインタフェースといえます。

この事故をもとに、エアバスA320を製造したエアバス社は飛行制御ユニットを操作するユーザーインタフェースのデザインを、分かりやすいものに一新し、以降の機体に搭載するとともに、エアバスA320の飛行制御ユニットの改修も行いました。

一番問題だったのは、やはり違うモードを切り替えるという部分でした。操作するのは人間ですから、勘違いや確認ミスでモードの選択ミスをしてしまうことがあります。それを「モードエラー」と呼びます。

モードエラーを発生させないためには、そもそも極力モード選択をしないような設計にすべきだという考え方はこの事故以前からありましたが、限られたスペースでのユーザーインタフェースを設計するために、そうした考え方が無視されてしまう部分があったのは確かです。

しかし、メーカーも大きな事故が発生したことにより、やっと省スペースのために人命が危険にさらされることがあってはならないということに気がつきました。

エアバス社は、モード選択を排除するとともに、数値の表示も降下率の表示は4ケタとし、降下角度の表示と一目で違うと分かるような改善もしています。

なおこの事故のそれ以外の原因として、飛行機が地面に異常接近したときにパイロットに警告するGPWS=対地接近警報装置が搭載されていなかったことも指摘されています。現在、対地接近警報装置は搭載が義務化されていますが、当時のフランスでは義務ではなく、スピードが売り物だったエールアンテール社にとって、高速で着陸態勢に入ったときに誤警報を出しやすい対地接近警報装置は余計な機能だったために搭載されていませんでした。

現在はGPWSが搭載され、また、墜落によって非常用遭難信号発生器が破損したために事故現場の特定が遅れ、墜落直後にはまだ息があった数名も命を落とすこととなったことへの反省から、非常用遭難信号発信器についても改善がなされています。

他に、パイロットがまだエアバスA320自体の操縦に慣れていなかった。副パイロットが機長に話しかけていたために、異常事態の発生に気づくのが遅れたなどといった原因があったとも言われています。

いずれにせよ、機械を動かすのは完璧たりえない人間であるという認識のもと、より安全性を高める努力をしてほしいものです。

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