昇降舵やその他の可動部のケーブルが全て切断されるとどうなる?

「昇降舵」は、水平尾翼の後部についている可動翼です。エレベーターとも呼ばれる、名前のとおり、上下するためのものです。

機首上げ、機首下げを行うときに使います。

機首の上下と表現しますが、機首を何かで持ち上げるのではなく、尾翼の上下を機首の上下に反映させるものです。

左右の翼をつなぐ線を軸として固定し、機首や尾翼の方を回転させるのがピッチ軸です。機体の上下は緩やかで穏やかなピッチ軸とも考えることが出来ます。

水平尾翼全体が可動する全遊動式(オールフライングテール)と呼ばれるタイプがあり、大型旅客機の機種によっては昇降舵と全遊動式が併用されていることがあるそうです。全遊動式のものは、スタビライザー(水平安定板)と昇降舵を兼ねることから、スタビレーターとも言われます。

ジャンボ機の左右の昇降舵は「外側昇降舵」と「内側昇降舵」に分かれていますが、これは一部故障したときにそなえて2つつけられているものです。昇降舵の動きが正常かどうかはEICASで見ることができますが、操縦席から昇降舵、他の部品でも、数十メートルの長さのケーブルでつながっています。

古い飛行機では、飛行機の各部分から操縦席まで、長いケーブルで一直線につないであるような構造をしていました。

飛行機のこの部分が動いて欲しいと思ったら、その部分につながっているケーブルを引っぱる。なにかの理由でケーブルが途中で切れていると、その先にある部品は、操縦席からいくら引っぱっても動いてくれません。もちろん、ケーブルが1本残らずすべて切断されたら、飛行機の機能が一挙になくなります。

素手でじかにケーブルをつかんで引っぱっているわけではありません。機械的に引っぱるのですが、気分的にはそういう感覚の道具なのが、飛行機でした。

現代のジャンボ機は、それを大型化し、大規模にしたような構造になっています。ケーブルはとてつもなく長く頑丈になり、一本くらい切れても大丈夫なよう、何本も備えられています。

ここまで大規模なケーブル群を、人間が手の力で引っぱることはできませんから、機械的に引っばることになります。

でも、ケーブルが引きやすくて操縦桿が軽く感じる、ケーブルが引きにくくて重く感じる。こういった手ごたえは、パイロットにたくさんの情報を与えます。操縦桿の軽さ重さ、操縦桿に伝わってくる感覚で、今機体がどういう状態にあるかが判るからです。操縦桿の感触がおかしければ、部品やケーブルの異常に気づくこともできます。

現代のジャンボ機で、全ケーブルが切断されることはありえません。

ですから、航空機の大型化・デジタル化に伴って、そういった意味での操縦感覚はなくなっても問題ないはずです。

ただ、操縦桿の重い軽いの手ごたえや感触は、パイロットに直感的に、機体の状況や置かれている環境を報せることが出来ます。これは画面表示ではとってかわることができないもの。

操縦桿の重い・軽いの感覚は、現代でもジャンボ機のパイロットが操縦しやすいよう、機械的に設定してあります。

文字通り飛行機が手動だった時代も、航空機は電子機器のかたまりと言われるようになった今も、操縦桿の手ごたえはパイロットに欠かせない操縦感覚と言えるでしょう。

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