エアバス社がメッカ巡礼者のために超大型機を売り込み中
タリバンやイスラム国など過激な武装集団ばかりが報じられ、まるで危険なテロ御用達宗教のように思われがちなイスラムですが、世界の大部分のムスリム(イスラム信徒)は平和を愛する敬虔な人々です。
全てのムスリムには一生に最低一度の「ハッジ」つまりサウジアラビアにある聖地・メッカへの巡礼が義務付けられています。ハッジはイスラムの暦で太陰暦のヒジュラ暦の12月に行われます。
サウジアラビア以外の国に住むムスリムの多くは飛行機でサウジアラビアまで行くことになります。産油国の富豪はプライベートジェットを使ったりしますがもちろんそれはごく一部。多くの人々は一般旅客機に乗って行くのです。
エアバス社は超大型旅客機A380をハッジへ向かう巡礼者のための大量輸送機としてムスリムの需要があるイスラムの国の航空会社へ売り込み、世界的な傾向として需要が減ってきている超大型旅客機の販売促進につなげようとしています。
A380といえば、国内の航空会社・スカイマークが発注していたものの、経営悪化により支払能力に疑問をもったエアバス社によりキャンセルされるということがありました。
A380は2階建てのダブルデッキ。シンガポール航空やエールフランス航空、アラブ首長国連邦のエミレーツ航空などが導入し、ホテル顔負けの豪華なファーストクラス・スイートクラスがあることで知られています。
「高級」ジェット機というイメージがあるA380を、エアバス社はハッジ用に狭小座席を取り付け、標準レイアウトでは500席台のところを最大850座席にまで増やして提供します。
現在ハッジの巡礼者向けにA380を購入する最有力候補と見られているのが、世界最大のイスラム国・インドネシアのガルーダ・インドネシア航空です。
また、メッカの地元サウジアラビア航空も購入へ意欲を見せています。サウジアラビア航空は2014年のハッジに向けて30機の旅客機をリースしました。
サウジアラビアではハッジ以外にも、12月以外に行われる小巡礼=ウムラーを行う巡礼者の増加とともに巡礼者の輸送専用旅客機の需要が増えており、A380のような超大型機の所有は経営的にも重要になってきていると見ているようです。
日本ではあまり馴染みがないように思われているイスラム文化。国内では泥縄式に2020年のオリンピックに向けてムスリムを迎えるための様々な準備がなされていますが、国内に住むムスリムのために日本の航空会社もハッジを意識した取り組みをしなければならない時が来るかもしれません。