世界的な燃料高騰に対して航空各社が行なっている対策とは?

2005年9月に公表された、米国大手エアラインの経営破綻は衝撃的な出来事でした。旅客数減や値下げ競争など、かねてから厳しかったアメリカの航空業界ですが、直接の原因はハリケーン「カトリーナ」。

この超大型台風が、アメリカ南部の石油精製施設を直撃したことで原油価格が急騰し、経営難の両社にとどめを刺すことになったのです。しかし、こうした問題はなにもアメリカに限ったことではありません。

当時のマスコミ各社の報道では、原油高の余波は日本の航空業界にも及んでいると伝えていました。日本の航空会社が年間に使用する燃料費は、日本航空(JAL)で500億円増加、全日本空輸(ANA)は割安な燃料を先物予約で調達したといっても285億円増加すると見込まれました。

こうした状況をふまえ、世界各国の航空会社はそれぞれに対策を立てました。ANAは新しいシートで燃料節約に挑むことに。

「なぜイス・・・?」その理由は軽量化にあります。航空機に限らず、動力式の乗り物の燃費は、その重量に大きく関係してくるのです。単純にいえば、ものを動かす場合、重いほうがよりエネルギーを使うということ。実際にANAが2005年10月から国際線に導入した新シートは、従来よりもゆったりと座れる上、抗菌・消臭作用のあるシートカバーを用いるなど、随所に工夫が施されています。

しかし、いちばんのメリットは、今までよりも軽くなったこと。この新シートにより、大型機1機あたり年間でドラム缶約200本分もの燃料消費が抑えられるということです。

また、シンガボール航空では、機内の装備を金属から合成樹脂に替えるといった案が出され、アシアナ航空では、短距離路線の用水の積載量を半分にするなど、あの手この手の軽量化作戦がとられました。

そんななか、JALが目をつけたのが「機体の塗装」。ジャンボの塗装は厚さわずか0.1ミリ。しかし、あの巨大な機体全面を塗った場合、その重量は約150キロにもなるのです。

同社では1992年に貨物機の1機に無塗装機を導入し、長期の運用でも問題がなかったため、2004年からさらに2機の無塗装貨物機を導入しています。この軽量化により、年間約4万リットル、距離にして羽田~札幌往復分の燃料が浮くこととなりました。

塗装には腐食防止の役割もあるのですが、これには、機体表面を機械で磨きあげることでできる酸化皮膜で対応。磨く作業は定期的に行なわれるため、銀色の機体は常にピカピカに輝いています。

ほかにも、エンジンの洗浄や運航ルートの変更、さらには離着陸の方法の見直しなど、燃費向上に向けた動きは現在でもさまざまな形で進められています。

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