エアバス社が今後数年で900機の人工衛星を作る戦略と目指す世界とは

「とりあえず安ければキャビンが快適じゃなくてもいいだろ」という方針のLCCに対し、一般航空会社は、例えば薄型シートを開発してシートとシートの間を広げるなど、キャビンの快適さに差別化を求めているようです。

フライト中の暇つぶしをいかにさせるかというのもまた、LCCとの差別化に繋がるということで、私がよく使うチャイナエアラインなどはシート備え付けのモニターで映画を見たりゲームで遊んだりできます。ただあれ、機内アナウンスが入ると中断しちゃうんですよね。

最近では機内でWi-Fiサービスを提供している航空会社も増えています。旅客機内でのWi-Fi接続は、通常衛星インターネット回線を利用して行われています。エアバスのA330-300には衛星からのWi-Fi通信受信アンテナを装備したものが出てきており、また、ボーイング787シリーズで2015年現在実際に運行している中では最新機の787-9には、Wi-Fi通信受信アンテナが最初から装備されています。

ただ、今のところの問題としては衛星通信の通信速度が遅いということ、そしてサービス料金が高いということ。

そうした流れの中、フランスのエアバス社は、イギリスのコングロマリット、ヴァージングループの系列会社で、衛星インターネットの構築を進めているOneWeb社と共同で、インターネット用通信衛星を開発する合弁会社を設立することになりました。

OneWeb社は2014年に設立されたばかりの新しい会社。創業者のグレッグ・ワイラー氏は、OneWeb社設立前にはGoogleの衛星通信部門にいた人物で、地球上どこででもインターネットに繋げられる世界を目指し、OneWeb社を立ち上げました。同社の目標は、2018年までに数千の衛星を打ち上げ、光通信レベルの速度の衛星インターネットを提供する事といいます。

一方エアバス社には宇宙産業部門があって、人工衛星の製造、打ち上げなどを行っています。また、エアバスグループの中には軍事衛星会社を買収したものもあり、人工衛星製造ノウハウを持っています。

衛星インターネット技術を持つOneWeb社と、人工衛星製造技術を持つエアバス社の提携は機内Wi-Fiサービスの発展を促進させるばかりでなく、地上でのネット接続のスタイルも変えていくかもしれません。

この合弁会社は、2019年までに900機の人工衛星を製造するとしています。驚くべきことに、それに間に合わせるために1日1機の人工衛星を製造するとしています。人工衛星って1日でできるんですね。

ただ、900機といってもそのうちインターネット通信に使われるのは7割ほどで、3割は予備として打ち上げられるそうです。簡単にメンテナンスや交換ができない宇宙空間のこと、予備を多めに確保しておくことが必要なのでしょう。

エアバス社側は、1日に1機の人工衛星を製造することで設計や製造技術の革新になるとして、より自社の衛星技術を高めるチャンスと見ている様子。効率的な生産ラインが構築され、人工衛星の大量生産が産業として成り立てば、衛星そのもののコストも下がり、それを利用したインターネットサービスも安価になっていくことでしょう。

いずれは空港内での無料Wi-Fiサービスと同じ感覚で、誰でも無料でインターネット接続できるようになれば、機内の退屈さも大分まぎれるのではないでしょうか?

関連記事

ページ上部へ戻る