「ドアモードを変更してください」って、なに?

搭乗便が空港に到着し、ボーディングブリッジにたどり着くと、機内に業務連絡のアナウンスが流れます。

「客室乗務員はドアモードを変更してください」

そのアナウンスとほぼ同時、乗務員がキャビンのドアに向かってなにかやって、その後、旅客機から降りるよう、案内されることになります。ですから、ドアモードの変更というのは、乗客を旅客機から降ろすためドアのロックを外すことかなと思いがちですが・・・。

実はドアモードの変更は、単にドアを開けることとは違うのです。

通常は、旅客機が空港にいるときにドアの開閉を行うのは、機外にいる地上スタッフの役割です。ドアそのものも、外側から開閉するようにできています。

乗務員が旅客機の内側からドアを開けるのは、できないことではないのですが、なんらかの緊急事態に行うことが多いのです。旅客機のキャビンのドアには、内側に緊急脱出用のスライドシュートが格納されています。緊急時には、ドアと開けると同時にスライドシュートにガスが送り込まれ、そのガスの勢いで地上または海へと届くのです。

ドアを開けてからガスが充填され、スライドシュートが伸びきるまでに要する時間は、わずか10秒ほど。緊急時、全乗客の脱出を90秒以内に完了できなければならないという安全に関する決まりがあります。

スライドシュートの速度はもちろん、旅客機の非常ドアの数や配置などは、それを考慮して設計されたものです。そんな勢いで出てくるものが、乗客が空港で、普通に旅客機に乗り降りしているときにうっかり作動したら、たいへんなことになります。

そこで、旅客機が空港に降りているときには、緊急脱出装置が不用意に動作しないよう、解除しておく作業が必要になるのです。旅客機が目的の空港に着いたら、ドアモードを「ディスアームド・ポジション」に変更します。

ドアモードを変更して、緊急装置を解除してから、空港の地上スタッフが外側からドアを開けます。そのあとで、乗客が手荷物を持って、旅客機から降りるわけです。

旅客機が出発するときも、全ての乗客の搭乗が終了してから、客室乗務員がドアモードの変更を行います。この時は、緊急装置が自動で作動するよう「アームド・ポジション」に変更します。

ドアモードの変更をしている客室乗務員の動作はさりげないものに見えますが、これも乗客の安全に関わる大切な仕事の一つなのです。

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