水平飛行は水平じゃないって、どういうこと?
海外などに長距離フライトで行くとき、いちばんの楽しみは、美味しい機内食です。旅客機が上昇を終え、水平飛行になってまもなく、キャビンでは最初のミールサービスが始まります。
ところで、ベルト着用のサインが消えるとすぐ席を立ち、化粧室などに向かう人がいますが、足元には注意したほうがいいかもしれません。
水平飛行に移ったときの旅客機は完全な水平、厳密な0度になっているわけではありませんから。
たとえば、客室乗務員が重そうなワゴンを押して、客席まで機内食などを運んできてくれますが、よく見ているとワゴンを通路の後方から前方へと押すときはたいへんそうで、逆向きだと軽々と押していきます。
ワゴンは、行きは食事などをいっぱいに積んでいるから重いし、帰りはほとんど入っていなくて軽いので、その違いにすぎないように思えますが、それだけが理由ではありません。
実は、水平飛行しているときの旅客機は、少し機首を持ち上げた形で、角度をつけて飛んでいるのです。最近の旅客機には「FMS(フライトマネジメントシステム)」というコンピュータシステムが搭載されています。
気象条件や機体の重量など、さまざまな条件を考慮して、その日のフライトに最適な「経済速度」で飛べるように、飛行ルートなどを算出するものです。
それにもとづいて推力レバーなどが自動的にコントロールされます。
機首の角度も調整されており、機首を2.5~3度くらい、国際線では1.5度くらい、わずかに持ち上げた格好で飛行を続けたほうが、燃費などの効率がいいのです。
水平飛行中に通路を歩いてみてください。ほんの少しですが、前方へ歩くときは上り坂、逆向きに歩くと下り坂に感じられるはずです。
その傾き具合で、ワゴンを押す具合も行きと帰りでようすが違ってくるわけです。
機体全体が3度傾いているなら、座席のテーブルに飲物を置いておくと落ちたりして危ないのではないかと思いますが、そこはよく出来ていて、テーブルはあらかじめ、3度くらい角度をつけて作ってあります。