緊急時に活躍する酸素マスクと救命チョッキ

旅客機が離陸に向けて滑走路までのタキシングを行っている間に、客室乗務員が緊急時の手順の説明をしてくれます。酸素マスクのつけ方や救命チョッキの膨らませ方など、実演もまじえての説明です。

客室乗務員の説明は一回きりですから、よく判らなかった人は、座席に案内が入れてありますから、それを見るのもいいでしょう。

誰が見ても、ひと目で判るよう、ずいぶん要領よく書いてあります。

役に立っては困る情報ですが、もしかするかもしれませんし、長いフライトでやることがなくなったり、目が退屈になったとき、手持ちぶさたにしているよりは、パラパラ見るのもいいものです。

ところで、旅客機がこうしていろいろと緊急時の備えをしている理由は、まずは「旅客機が飛んでいる高度は空気が薄すぎ、人間が呼吸するには酸素不足だから」です。

もし、その酸素不足の空を飛んでいる最中に、機体に異常が起きたり、機体に穴が開いたりすると、客室内も同時に酸素不足になります。客室内に「人間が呼吸できない上空の空気」が入り込むからです。

このような場合、パイロットはまず「エマージェンシー・ディセンド」を行います。「緊急降下」ともいわれるものです。「この高度まで旅客機を下げれば、空気中の酸素が充分にあり、客室や乗客が安全になる」という高度があります。

緊急降下の目的は、そこまで旅客機の高度を下げること。

ですがその安全な高度に達するまでの間は、客室内の酸素は足りません。

そこで登場するのが酸素マスクです。パニック映画で旅客機が危険になると、座席の頭上から白いマスクが各座席に向かって一つずつ降りてきますが、あれが酸素マスク。実際の飛行機でも、室内の空気圧が0.7気圧以下になると、自動的に天井からマスクが降りてくるしくみになっています。

同時に大切なのが、緊急着陸時にとる「安全姿勢」です。シートベルトを腰骨の低い位置で固定し、上半身を前かがみにします。足首がつかめる人はつかみ、それができなければ頭を抱えて前の座席の背に押し当てます。こうして体を固定しておくと、着陸の衝撃で体が前方に投げ出されるのを防ぐことができるのです。

緊急降下・酸素マスク・安全姿勢と手順を踏んで、旅客機が緊急着陸を果たしたあとは、いよいよ機体から脱出するわけです。「緊急時、乗客にいかに迅速に機体の外へ出てもらうか」に関しては、旅客機の設計段階から、徹底して計画されています。

ボーイング747のような巨大旅客機であっても、たった「90秒」ですべての人が機内からいなくなることができるよう設計してあります。旅客機の全ての非常口から、約10秒で脱出用のスライドが地面に降ります。乗客はこれを使い、地上へ滑り降りることができるのです。

このほか、旅客機には、不時着水したときのための救命チョッキや救命いかだなども備えられています。

旅客機の緊急時となると、いつどこに脱出することになるか判りません。これまでの経験を踏まえたり、あらゆる場面を予想して、いろいろな用意がされているのです。

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