桃園MRTも開通した今、松山空港の存在価値が揺らいでいるという事実

2017年現在、台湾は日本人の海外旅行先としてトップ人気を誇る国になっています。

きっかけは東日本大震災に際して台湾人が示してくれた温かい温情だなどとも言われています。

ただ、実際のところ台湾政府による積極的な観光誘致、LCCの登場による運賃の低下といった要因もあり、多額の義援金をくれたからという理由だけで人気になったわけではないでしょう。

一昔前は、台湾へは基本、桃園国際空港に到着してから台北市内までリムジンバスで移動というルートが主流でした。

もちろんお金持ちはタクシーに乗ったり、パッケージツアーだと送迎バスも出ますが、一般人の身にとってはバスより数倍、下手をすると10倍ぐらい高くなるタクシーはありえません。

ツアー会社と結託した土産屋に強制連行されるパッケージツアーもありえないため、選択肢は一つだけでした。

ですから、羽田空港が再び国際空港になり、羽田-松山便が就航したときは本当に嬉しかったですね。台北の松山航空は台北市の北側にあり、空港から市街へは30分もかかりません。

桃園からリムジンバスだと、道路状況にもよりますが、台北駅までだいたい1時間は掛かりました。帰りも、桃園発と松山発だと余裕がまったく違います。

ちなみに、羽田には再国際空港化する前にも、実はチャイナエアラインが就航していた時期もありましたが、そちらは桃園行きでした。

松山空港への着陸ルートは、台北市上空にあります。ですから、例えば保安宮という道教の廟とか、花博公園などに行くと、松山空港に進入していく飛行機を目の前に見ることができます。

花博公園などは特に真上を飛行機が通っていきますね。

ただ、このように台北市内にあって便利この上ない松山空港も、それゆえの問題も持っています。

そもそも松山空港は、1936年の日本統治時代に開港した非常に古い空港。ですから、当然現在のジェット旅客機の運用を想定して作られたわけではなく、キャパシティーが狭い。

桃園国際空港ができてからは国内線専用空港だったものを、馬英九政権時代に中国からの旅客受け入れのため、無理やり国際空港に戻したという経緯があります。

また、市街地に隣接した空港であるため、夜間飛行制限を行っており、処理機能に限界があります。それら諸々の問題により、松山空港の機能移転案が出てきました。

これには、台湾高速鉄道開業による桃園-台北間の移動の利便性が高まったことも関係しています。

2017年3月には遅れに遅れていた桃園MRTがようやく開業し、桃園への移動はより便利になり、松山空港は以前ほど桃園より便利ということもなくなってきました。

日本の国土交通省にあたる台湾の交通部民用航空局の林局長は、20年以内の松山の機能移転はありえないという見解を述べました。

確かに自分の上空を通り過ぎていく飛行機を、台北にいながらにして見られるという体験ができなくなるのは寂しい。

しかし、それは旅行者の理論であって、やはり住んでいる人にとっては頻繁に襲ってくる騒音は耐え難いものがあるでしょう。

日本からのMRTが全て桃園に到着し、桃園MRTも開業した今となっては、少なくとも国際空港としての松山の価値はもうほとんどなくなってきています。

台北市は機能移転後、空港の半分を森林公園とするとしており、そういう市民の憩いの場が増えるのであれば、それほど松山存続にこだわらなくてもいいのではないかと思います。

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