首都圏の空港アクセス交通網はこれ以上充実させるべき?

首都圏、特に都心の電車・地下鉄・バスの交通網の充実ぶりは、世界一と言っても過言ではありません。どこへ行くにも不自由なく、むしろ旅行者などにとっては充実を通り越して複雑でもあります。

ところで、そんな首都圏の交通網について2014年から今後に関する議論がされているのをご存知でしょうか。

この会合は交通政策審議会が主催する「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」で、東京圏の新線構想について議論されています。

2020年のオリンピックをにらんで空港に関する路線についても、JR東日本が提案する羽田空港アクセス線や東京モノレールの東京駅までの延伸、東急多摩川線と京急空港線を接続して羽田空港まで結ぶ案や羽田から成田を直通で結ぶ新線構想など、これまでの会合の中で様々な発案がされていました。

2015年3月に開催された7回目の小委員会で議論されたテーマは「空港アクセスのあり方について」だったのですが、議論の大半は鉄道やバスの24時間化や案内サイン、バリアフリーの改善という内容でした。

30ページにわたる配布資料の中にも空港アクセスの新線に関わる記述はどこにもなく、その代わりにこのようなデータと記述がありました。

・羽田空港発着列車の定員約35万人/日に対して、羽田空港駅の乗車人数は約7万9,000人/日。
・東京圏の夜間人口の87%は1時間30分以内、47%は1時間以内に羽田空港まで到達可能。
・成田空港発着列車の定員約14万人/日に対して、成田空港駅の乗車人数は約3万2,000人/日。
・東京圏の夜間人口の61%は1時間30分以内に成田空港まで到達可能。

「鉄道整備を行う際には、既存ストックの有効活用の観点から、まずは既設路線の改良で対応することとし、それでもなお、課題に適切に応えられない場合に新規路線の整備の検討を行うべきである」

どうやら、両空港とも地上交通の輸送力は既に充分確保されていて、空港までの所要時間が長時間となる割合はあまり高くないため、既存の電車で充分ということのようです。

空港への新アクセスの案はなくなったということでしょうか?

小委員会の委員長を務める東京大学政策研究大学院大学教授の家田氏は、「空港アクセス線については、もちろん検討を続けている。ただ、さまざまな提案が出ているため、今回は踏み込めなかった」と語っています。

委員会関係者は切り捨ててはいないと言い切る中、鉄道の関係者の間ではどの提案も2020年までには間に合わないため、空港アクセスの充実について結論を急ぐ必要がないとされているのでは、と言われているようです。

一方、東京都がオリンピックに向けて都心と臨海副都心を結ぶ高速バス輸送システムBRT構想は着々と進んでいるようで、同じ3月には「基本計画に向けた中間整理」が発表されました。

東京交通局や京成バスなどの事業協力者も選定され、ルート案も発表されるなど、順調に運んでいるようです。

さらに東京都は2015年3月に、首都圏の整備すべき鉄道路線を占める「広域交通ネットワーク計画」の中間まとめを発表しました。

該当する路線は約20となっていて、その中で整備効果が高いとされたのは多摩都市モノレールの延伸や東京8号線の延伸(豊洲~住吉)などの5路線となっていましたが、その5路線の中には羽田・成田等の空港アクセスに関連する路線は選ばれていないことから、東京都としては重要視していないことが伺えます。

交通政策審議会の小委員会では、どの提案を採択するのかを含めた今後の都市鉄道のあり方についての答申が、2016年3月までにまとめられる予定となっており、その前段として、この春には中間の取りまとめが作成される予定となっています。

東京都の広域交通ネットワーク計画は、この答申との整合性が図られるとされていますが、今のところ先行している都の計画が国交省の答申に少なからず影響を与えることになりそうです。

JR東日本が計画する羽田空港アクセス線の総事業費は3,200億円、蒲蒲線も1,080億円という巨額の投資が必要となります。ここまでの金額は、鉄道事業者だけでなく、国や都の資金も投下される投入されるレベルのプロジェクトになることは必須。

2015年3月の小委員会で出された資料データによると、空港のアクセスについては充分整備されており、これ以上の充実は必要ないように思われます。オリンピックのためのインフラ整備も必要ですが、終了後も維持していくことまで視野に入れ、冷静な議論の上で決められるべきことのように感じます。

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