飛行機を陰で支えてくれている、空港にいるスタッフさんたち

旅客機というと、パイロットや客室乗務員、そして空港のグランドスタッフさんたちを思い浮かべます。

利用者にとって、直接目にしたり接触するのは彼らだから、当然といえば当然です。しかし、旅客機の運航には、このような人たちだけではありません。

飛行機が空港に到着し、再び出発するまでの間、一機の飛行には様々な多くのスペシャリストたちが活躍しています。

到着した飛行機の誘導、貨物の積み降ろし、燃料の補給、機内の清掃、そして出発機のプッシュバックなど、飛行機の駐機中には様々なスタッフが関わっており、そのスタッフ達のおかげで、飛行機は安全・スムーズに、利用者も安心して飛行機に乗ることができます。

これらの、航空輸送における空港での地上業務を総称して、グランドハンドリングといい、クルーや旅客スタッフたちから「グラハンさん」などと呼ばれ、頼りにされています。

グランドハンドリング業務の多くは、現在、各航空会社が関連会社に委託して行っています。国内では、JALやANAといった大手の航空会社は自社の出資によるグループ企業へ委託しているケースが多いようです。

航空会社は、運航している飛行機が空港に到着し、次に出発するまでの時間を可能な限り短くしたいと思っています。これは、空港での駐機時間を短くすることで、航空会社は航空機の回転率を高め、収益向上を図りたいためです。

グランドハンドリングを請け負っている企業は、そのような航空会社の要求に応えるため、安全かつ迅速な空港サービスを提供しなければなりません。

代表的なグランドハンドリング業務とは、発券カウンターでの旅客サービスから、マーシャリング、ボーディング・ブリッジ、機体のプッシュバック、トーイング、手荷物と貨物の積み降ろし、機内の清掃、ケータリング、燃料の給油、降雪のある空港での機体除雪、機体外部の洗浄、出発準備における機体整備作業など、多岐にわたります。

ではここで、ある便が空港へ到着し、次に出発するまでを想定して、その間に行われる作業を時系列で見ていきたいと思います。

飛行機が着陸し、スポットへやってきました。

するとマーシャラーと呼ばれる人が航空機を誘導します。

飛行機に乗って着陸する際、飛行機の前でしゃもじのようなものを持った人がハンドサインのようなものをしているのを、窓から見たことがある人もいると思います。

そのサインをしているのがマーシャラーで、着陸した航空機を駐機場(スポット)やハンガーに誘導(=マーシャリング)する専門職のことをいい、航空機誘導員ともいいます。

パドルという、しゃもじを大きくしたようなものを両手に持ち、それを使って手旗信号のようにパイロットに合図を送ります。

この駐機の際、マーシャラーのほかにも、ウオッチマンやチョークマンと呼ばれる人たちがいます

ウイングウオッチとは、航空機の機体が障害物や建物などにぶつからないように監視する作業です。航空機の機体はとても大きく翼は長いので、パイロットが目で確認するのには限界があります。また、目に見えない死角がたくさんあるので、ウオッチ作業はとても大切になります。

ウオッチ作業は、ウオッチマンと呼ばれる人と他の担当者が合図を通じて、航空機を安全に目標場所へ移動できるよう監視し、導きます。空港には地上機材・車両などが走行しているので、空港内の状況や航空機の特徴を十分に把握しておかなければなりません。

そして、チョーク作業は航空機に車輪止めを取り付ける作業のことで、チョーク作業を担う人はチョークマンと呼ばれます。

マーシャラーの補佐を行い、マーシャラーに航空機の停止位置を指示します。そして、航空機が停止したときに、「チョーク」と呼ばれるタイヤ止めを車輪にセットし、航空機を固定します。また、航空機が出発する時にはチョークを外します。つまり、航空機が地上に留まっている時の、最初と最後の安全を担っているのがチョークマンなのです。

この4人の連係作業があって初めて、航空機をスポットに安全に停止させることができます。

このマーシャラーと同様、トーイングという仕事もチームで行います。航空機のコクピットの中に入ってギアやブレーキ操作を行うブレーキマン、そして航空機の前輪に取りつけたトーイングカーで航空機を引っ張るタグマンです。

この3人の連係も非常に大切です。

エンジンが止まり、乗降用ドアにボーディングブリッジが接続されます。乗客がこの搭乗橋を使って降り始めると、反対側のドアでは別のスタッフが貨物作業を始めます。

到着便に積まれている荷物を降ろし、手荷物ゲートに運びます。

そして今度は次の便の乗客が預けた荷物を飛行機に積み込みます。

また、国際線であれば、飲料や食事を搭載しなければなりません。さらに、次の便の出発に向け、燃料も給油しなければなりません。ちなみに、とりわけ国内線と国際線で駐機時間の長さが極端に違うのは、この給油時間の差によるものです。

貨物や荷物が積み込まれ、乗客が搭乗し、出発の準備が整うと、先程のチョークマンが車輪止めを外し飛行機が動き出します。

飛行機はバックが出来ないので牽引車で機体をプッシュバックさせ、飛行機が自力で動ける状態になり、スポットを離れるところで、その機体を担当するグランドハンディングの仕事は終了となり、全員が並んで手を振って送り出してくれます。

飛行機が到着し、次に出発するまでの間、実際には直接かかわることのないスタッフの方達ですが、彼らのおかげで私達は安心して飛行機を利用することができます。

どの業界でもそうだと思いますが、利用者の目には直接触れないところでも、必ずその陰には支えてくれている人たちがいて、その人たちのおかげで、その業務は成り立っているのではないのかと思います。

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