既存メーカーの新型機と、そして新たな航空機メーカー

世界中のLCCが使用している飛行機の機体で代表的なのが、エアバス社のA320とボーイング社の737です。

どの業界・分野でも技術革命・進歩が見られますが、飛行機も然り、幾度となく進化してきており、今もなお、進化の途上です。前述のA320・737も、次世代型A320neo・737MAXを開発中で、多くのLCCも大きな関心を寄せています。

まず、A320neoですが、2010年末に改良版のA320neoを発表後、受注を急速に増やし、これまでの確定受注機数は2013年3月時点で1878機に上っています。

このA320neoでは、neo:New Engine Optionが示すように新型のエンジンが搭載され、各航空会社は2種類のエンジンを選択することができます。このエンジンは環境効率が高く、1機あたり年間3,600トンのCO2削減を目標としています。これは、24万本の木が吸収するCO2の量と同じだそうです。さらに騒音も大幅に軽減できるということです。

そしてエンジンのみでなく、主翼にも新たな設計のウィングレッドが装着されます。これはシャークレットとよばれるもので、両主翼の先端に標準装備されています。

シャークレットの高さは2.5メートルで、これにより消費燃料を最大3.5%削減、CO2の排出量は1機あたり年間約700トン減らすことが可能だということです。また、飛行中の空気抵抗を極力抑えることにより、航行距離を100マイル延長することが出来るそうです。

シャークレットは後付けが可能で、バニラエアやシンガポールのタイガーエア、フィンエアー、アメリカン航空、ネパール航空などから発注を受け、一部納入も終えています。

エアバス社はこの新型エンジンとシャークレットの相乗効果で、消費燃料を計15%削減することが出来ると試算しています。

このA320neoは2015年に1号機が納入される予定で、これからはシャークレットが装着された飛行機をよく目にするようになるでしょう。そしてシャークレットがエアバス社の新しいシンボルとなるかもしれません。

一方、ライバルであるボーイング社も、A320neoに影響を受けています。元々機体の改良を考察していたところにA320neoの発表を聞き、遅れをとらないようにと737MAXと名づけた737NGシリーズの後継機開発に着手しました。

MAXとしたのは、効率も信頼性も最大で、乗客にとっての快適性も最高の旅客機に、という目標を込めているためだそうです。

この737MAXには737MAX7・737MAX8・737MAX9の3系統が予定されており、新開発の高性能エンジンが搭載されるそうです。A320neoの2年後、2017年に初号機を納入予定です。

航空機の生産はこれまでずっと、ボーイングとエアバスに牛耳られてきました。そこに新たに中国国営メーカーの中国商用飛機、COMACが参入しようとしています。

COMACはフランスで6月に開催された航空機見本市「パリ航空ショー」で世界に注目されるようになりました。アイルランドのLCC大手ライアンエアに中型旅客機「C919」を提供するという契約を結んだのです。

ライアンエアは現在、ボーイング機のみを採用しており、ボーイングにとっては、欧州最大の顧客です。そこが航空機を買ってくれるとなれば、COMACは単通路型中型機市場への足掛かりを得られることになります。中型単通路型機は今後20年間に生産される航空機の約半分を占める、とボーイングは予想しています。

一方、エアバスの予想では70%と、その割合はさらに高くなっています。

エアバスもボーイングもパリ航空ショーにおいて、新たなライバルの出現を認めました。エアバスの広報担当者は、「航空交通量は毎年5%増えており、これ以上、2社独占体制が続くとは思っていない」と述べています。

ボーイングの民間航空機部門CEOも会見で、独占体制が終わったことに同意しています。

ボーイングとエアバスは、他にもカナダやブラジル、ロシア、そして中国の新規メーカーと競争することになると語っています。

そして、カナダのボンバルディアとCOMACによる部品の共同調達など、市場の変化を見越した中小規模のメーカーは互いに協力・提携して、参入しようとしています。

世界で定評のあるエアバスとボーイングではなく、COMAC機を採用するに至った理由の一つは、その安さゆえです。C919の価格は未定ですが、COMACが欧州市場に参入するには低価格が必須でしょう。同社はさらに、世界で最も成長の速いアジア太平洋地域にも目を向けています。

今のところアジアでも、最大の航空機メーカーはボーイングとエアバスです。しかし、間違いなく、COMACはアジアでの地の利を生かして、この2社に挑んでいくでしょう。

ボーイングの市場調査によれば、2011~30年でアジア太平洋地域には1万1450機、総額1兆5000億ドル分の航空機が新たに導入される見込みです。対する欧州市場では、2030年までに7550機が新規納入され、その総額は8800億ドルだということです。

関連記事

ページ上部へ戻る