巡航飛行中もシートベルトをしておくことの重要性

空の旅に慣れているとみられる乗客にかぎって、シートベルトを着用したがらない傾向があります。しかし、「シートベルト着用」のサインが出ていなくても、着席時には常にシートべルトを着けておくべきです。

なぜなら、乱気流による機体の揺れで、重いケガをしたり、死亡したりする乗客の多くは、シートベルトを着けていなかった人たちだからです。

1997年12月28日、成田からハワイ・ホノルルに向かっていたユナイテッド航空のジャンボ機(ボーイング747)が、太平洋上で突然乱気流に巻きこまれて急降下し、乗客1名が死亡、重軽傷者129名を出す事故が起きました。

深夜で上空が真っ暗なため、パイロットが目視で雲などを確認することはできませんでしたが、気象レーダーには何も映っておらず、悪天候ではなかったようです。こうしたことから、ジェット気流の周辺に発生する「ウインド・シア」(水平または垂直方向に風向きや風速に急激な差が出る状態)が起こした「晴天乱気流」が原因だったのではないかとみられています。

乱気流のなかで下向きの気流が起こっている部分を「エア・ポケット」と呼びますが、ここに旅客機が入ると、機体は急降下します。ちようど、ジェットコースターで降下していくような感じです。客室内の固定されていない「モノ」は、テーブルの上の食器であれ、客室乗務員が押しているワゴンであれ、はたまた通路を歩いている乗客であれ、天井に叩きつけられます。その衝撃が強かったり、打ちどころが悪かったりすると、死にいたることもあるのです。

では、運悪く乱気流に突入してしまった場合、パイロットはどのように機体をコントロールするのでしょうか。自動車の運転にたとえると、乱気流は舗装されていない砂利道のようなものです。道路の状態が悪くなると、普通のドライバーは速度を落とします。乱気流を通り抜ける旅客機も同じです。減速させて、機体の揺れや振動をできるだけ小さく抑えるようにします。その状態で計器を見つつ、機体の向きや姿勢を調整しながら、乱気流から抜け出るのを待つのです。

雲のなかで起こる乱気流や、山岳地の上空で起こる乱気流(富士山の乱気流によって、空中分解、墜落した旅客機もある)と比べると、晴天乱気流の規模はそれほど大きくないといわれています。雲や山のように、目で見て危険を回避するということが難しいという問題はありますが、少なくとも高高度を巡航中に遭遇した晴天乱気流が原因で、旅客機が墜落してしまうといった心配はありません。パイロットも、乱気流に遭遇したときの操縦訓練は十分に受けているので、シートベルトさえしっかり締めておけば安心です。

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