ベテランパイロットも着陸したくない!?世界の危険な空港たち

世界中には1万ヶ所以上、空港があると言われています。そんな中にも、一歩間違えば谷底だったり、断崖絶壁にある空港など、世界中には様々な空港があります。

例えば、カリブ海のオランダ自治領、サバ島にある唯一の飛行場ファンチョ・E・ヨラウスクィン飛行場。全長400mという、世界一短い滑走路を持つ商業空港として有名で、飛行場は海に突き出た三角形の狭い土地を利用して作られており、三角形の一辺は急斜面の山腹、残りの二辺は海へ通じる崖という、恐ろしい立地につくられた空港です。

また、インドと中国にはさまれているチベット仏教国家、ブータン王国のパロ空港も同様。この、海抜2,500mの高度に位置するパロ空港は世界一パイロット泣かせといわれており、5,500m級のヒマラヤの高い山々に囲まれています。その間を縫うように飛ぶので、離着陸の際はパイロットに高度な技術が要求される上、航空管制は配置されていないそうです。

さらに、ネパール東部、クンブ地方ルクラにあるテンジン・ヒラリー空港はヒマラヤ山脈の谷間に位置し、標高が高いため大気密度が低く、しかも天候が非常に変わりやすい上、滑走路は460mしかなく、その短く傾斜した滑走路は世界で最も高度な着陸が要求される空港の一つです。滑走路の標高は2,900mに位置し、ヒマラヤ山脈に囲まれています。このような場所に空港があるため、航空機事故が多い空港としても有名で、それ以上にエベレスト登頂への出発点となる空港としても有名です。

このように世界には数々の、「危険」といわれる空港がありますが、上記の空港の特徴の一つでもある、標高の高さで有名な空港も少なくありません。

そもそも飛行機が飛ぶ原理として説明されるとき、揚力という言葉が使われます。空中を飛ぶ飛行機にも重力が作用しますが、飛行機が落ちないのは主翼に上向きの力、つまり揚力が働いているからです。

翼が空気中を進行すると、周囲の空気は翼に沿って流れますが、翼の断面は下面より上面のふくらみが大きく、翼面の空気の流れの速さは、下面より上面の方が大きく加速されます。

空気の圧力は、空気の流れの速さが速くなるほど小さくなり、逆に遅くなるほど大きくなるので、通常、翼の表面では下面の圧力が上面の圧力より大きくなり、全体として翼は上向きの空気力を受けることになります。この空気力の、飛行方向に垂直な方向の力を揚力と呼び、飛行機が空中を飛行できるのは、機体の重量に等しい揚力を翼で発生し、重力と上下方向の力のバランスを保っているからです。

この空気の圧力の差が、機体を持ち上げる揚力となるのですが、標高の高いところにある空港では、もともと気圧が低いため、主翼に大きな圧力の差を生じさせることが難しくなります。

標高2,000mを超える高地にある空港では、気圧が20%ほど低くなるため、飛行機の性能も20%低下するそうです。そのため、同じ重量の飛行機が離陸するには、標高2,000mでは、通常より20%長く滑走しなければならず、逆に同じ滑走距離で離陸するためには、重量を20%削減しなければならないことになります。

このことから、高地の空港では離着陸が難しいとされており、また、離陸には長い滑走距離が必要となります。

その長い滑走路があるのは、中国チベット自治区チャムド地区に位置するチャムド・バンダ空港で、5,500mという世界一長い滑走路を持っています。

中国チベット自治区には、他にも長い滑走路をもつ空港があります。ロカ地区クンガ県にある、海抜4,004mのラサ・クンガ空港で、路線は主に国内線であるにもかかわらず、滑走路の全長は4,000mと、成田と同じです。

さらに中国の報道によると、中国政府は、チベット自治区のナクチュ地区で新空港を整備する方針を決めており、完成すれば標高4436mと、同自治区内のチャムド空港を上回り、世界で最も高地に位置する空港となります。この空港が開港すれば、これまで世界で一番標高が高いとされてきた、標高4061mにあるボリビアのエル・アルト空港を上回ります。

一方、日本の空港はどうでしょうか。

航空法に基づく全国98空港の中で、日本一高い場所に位置する空港は、標高657.5mのところにある長野の信州まつもと空港で、同空港には自動誘導装置がない上に、まわりが3,000m級の山々で囲まれているので、急降下しなくてはならず、離発着が難しいとされている空港でもあります。

このように、世界の空港の中には富士山よりも高い場所にあるところもあり、パイロットにとっても乗客にとってもハラハラしてしまう空港が少なくありません。しかし、離陸後、高度が上昇したときに見られる、壮大な山々の景色は、その飛行機に乗った人たちだけの特権とも言えるでしょう。そのため、一度は体験してみたいと思う旅行者たちが絶え間なくやってくるそうです。

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