NAA成田国際空港の上場はなぜ実現しないのか?

現在、空港不動産業や空港管理会社が世界的に注目を集めています。

日本一の規模を誇る羽田空港を管理運営する日本空港ビルデングは上場企業ですが、一方で成田空港を管理運営するNAAのロゴで知られる成田国際空港株式会社は非上場のままとなっています。

成田国際空港株式会社、略称NAAは、成田空港の開港を担った新東京国際空港公団の業務を継承する形で、2004年に民営の企業として設立されました。

2004年に成田空港株式会社法という企業名称そのままの法律が施行され、成田国際空港の設置及び管理についてはこの会社に一任することとなっていますが、資金はすべて政府から無利子貸付を受けており、事業計画とその実施にあたっては、国土交通大臣の認可が必要という極めて特殊な形態の民間企業なのです。

また、民間企業とは言いながら、その株式の90.01%を国土交通大臣が、9.99%を財務大臣が保有するという国営といっても過言ではない企業となっています。

2006年頃には早期上場を目指す動きが見られていましたが、最近ではすっかりそんな話も聞かれなくなっています。

成田国際空港株式会社は、会社設立から2年後の2006年には早々に株式上場による完全民営化を目指し、社内に上場準備室を設置するなど株式公開へ向けて備えていました。

しかしながら、2008年に審議された成田国際空港株式会社法を改正する法律案が衆議院解散で審議未了により廃案となったことから、上場話は立ち消えとなったまま今日に至っているのです。

さらには、この間に政権が民主党と自民党の間を行き来するというNAAの意思決定において必ずしもプラスにならない状況を経ていることから、民営化は実現されないままとなっていましたが、ここへきて改めて上場による完全民営化を目指すという2013~2015年度にかけての中期経営計画が提出されたのです。

羽田空港の国際化や関空などのハブ化推進なども進んではいるものの、国際線における国内シェアは相変わらず高く、NAAは開業から安定的な営業収益と営業利益を維持しています。

2014年3月決算では、営業収益1,906億円、営業利益335億円を計上している超優良企業です。

現状では国営の名残からか限られた業務だけをこなす企業となっていますが、完全民営化が進めば機動力も高くなり、更なる収益拡大へのチャンスが増えるものと思われます。

また、2020年の東京オリンピック開催に向けて空の玄関となる成田空港の整備充実は必須であり、この他にもアジアにおけるハブ空港化の推進などが進められている折、完全民営化は絶好のチャンスといえるでしょう。

しかしながら、水面下の動きを別にすれば、実際には積極的に上場に動いている状況ではないというのが現実のようです。

そもそも、空港管理会社は、世界的にみても空港を専門とする不動産業の性格が強く、欧州エリアでは欧州中央銀行による量的金融緩和の後押しにより同業態の欧州企業の株が大きく上昇している実態もあります。

EUの企業とは業態は少し異なりますが、羽田空港の管理会社である日本空港ビルデングの株価が大きく上昇して注目を浴びているだけに、安定的な利益をもたらしてくれることが想定されるNAAの上場を心待ちにする投資家も少なくないでしょう。

また、NAAが上場することで現在国交・財務の両大臣の保有株式のキャピタルゲインにより、財政難である国庫を潤す効果もあると期待されます。

様々な観点から、NAAの上場には事業的な将来性と利益拡大の展望が潜んでおり、特に上場を先延ばしする理由も見当たらないのです。

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