旅客機の滑走路上のスピードあれこれ

ベルト着用サインが点灯して、離陸滑走が始まると、目に見えない力で身体がシートに押し付けられる感じがします。このとき、旅客機はどのくらいのスピードを出しているのでしょう。

旅客機の速度に関しては「V1」「V2」などの言葉があります。

空港管制塔から離陸許可が下りると、機長が「テイクオフ!」と発声をします。行くぞ、という意味の、力強い言葉です。

この時のエンジン音やタイヤの振動は、シートに座っていても伝わってきます。車や電車では経験できない、旅客機ならではの振動です。

機体の滑走スピードがあがっていき、やがて「V1」に達します。

「V1」は、離陸決心速度。

滑走する速度がV1を超えると、離陸を中止することはできません。フライト時の条件にもよりますが、だいたい、時速300~350キロくらいです。

搭載する燃料、機体のトータル重量、その日の滑走路の風速など、離陸速度はそれらの条件を考え合わせ、毎回のフライトごとに、綿密に計算されています。

V1に達する前であれば、なにかあった時は、翼面のスポイラーを立てたり、マキシマムブレーキ・プレッシャーを使ったりして、機体を停止させることは可能です。ですが、V1を超えてしまうと、どんなアクシデントが起きたとしても離陸は中止できません。無理に減速して止まろうと思っても、限られた長さの滑走路から飛び出してしまい、より危険が強まる可能性があるからです。

V1を超えてからトラブルが発生したときは、ともかく一度離陸して、空港に引き返すのかどうか、もっと別の対応をするか、上空で判断することになります。

V1の次に、「VR」と呼ばれる速度があります。

「機首引き起こし速度」です。

「ローテーション!」という副操縦士のコールを合図に、機長が操縦桿を静かに手前に引きます。機体のノーズが持ち上がり、15度ほどになるまで操縦桿を引いていくと機体が地上から離れます。

「V2」は「安全上昇速度」。

機体は完全に滑走路から離れています。「ギアアップ!」という機長のオーダーに応じ、副操縦士がギア操作レバーを「UP」の位置に。ギア(タイヤ)が完全に機体の中に格納されます。

ここから機体は高度1万メートルを目指して、上昇していくわけです。

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