ジェットスター・ジャパンが、整備で工夫していること

航空機の整備マニュアルは、すべて英語で書かれています。航空機を作った欧米のメーカーが作成するからです。日本の整備士は、日本の航空法に則って、そのマニュアルに従って、旅客機を整備しています。

「マニュアルに書かれた指示を、そのまま整備に反映する」のが大原則。

英語で書かれた整備マニュアルを英語で読み、日本語に翻訳することはありません。英語では説明しきれない、日本語ならではの単語があるように、日本語でうまく意味を説明できない英単語も多いからです。航空機マニュアルのように、専門性の高い英語となると、そのあたりがさらにシビアになってきます。

「マニュアルに書かれたことをそのまま行う」という大原則は外せませんが、ジェットスター・グループでは、LCCならではのさまざまな工夫を行い、整備の効率化に努めています。

旅客機の整備には「ライン整備」と「ドック整備」の2種類あります。

毎日のライン整備は、空港に帰ってきた旅客機が、次に出発するまでの間に行います。

ジェットスター・ジャパンが保有しているのは、2014年6月現在で18機。日々の整備は、7~8機をJALエンジニアリングに委託し、他の約10機は、ジェットスター・ジャパンで整備を行っています。整備を行う整備士の配置には、ジェットスター・ジャパン独自の工夫があります。大手の場合、拠点にも就航先にも多くの整備士を配置しますが、ジェットスター・ジャパンの整備士が配置されているのは、会社の拠点である成田空港だけです。

ジェットスター・ジャパンの旅客機が飛んでいく各地の就航先には、通常は、ジェットスター・ジャパンの整備士がいないのです。就航先でジェットスター・ジャパンの飛行機に故障が発生したら、整備士が成田から出かけていって、修理することになります。ですから、もしジェットスター・ジャパンの飛行機が沖縄で故障したら、整備士は3時間かけて沖縄に向かい、その間、飛行機は飛べません。

整備士が修理に来てくれるのを、じっと待っていなければならないからです。

しかし、そうなる確率はきわめて低いものです。LCCの「航空機の故障にともなう遅延・欠航率」は、0.3%。大手の航空会社では、就航先すべてに整備士を置いていますが、こちらの「航空機の故障にともなう遅延・欠航率」は、0.2%。つまり、LCCの欠航は、1000便に3便、大手の欠航は、1000便に2便ということになるのです。

LCCは「1000便に1便の遅延・欠航は、お客さまにご理解いただく」という方針を取ることにしています。そうすれば、就航先すべてに整備士を配置するコストが要らなくなり、その分、旅客機を利用する料金を安くできるのです。

それに、最新の旅客機は「自己診断装置」と「空対地データリンク装置(ACARS)」を備えています。空港に到着してから、システムに問題があるかどうか、点検を始めるのではありません。システムに問題が発生したら、飛行中でも即座に把握できるようになっています。

その情報は、地上で待機している整備士たちにも同時に伝わります。旅客機から地上に送られてくるデータで、原因の特定から部品の準備まで行い、旅客機が空港に来たら、すぐ修理に取りかかれるようになっているのです。

一方、ハンガー(格納庫)に機体を搬入し、じっくりと点検・整備を行うのがドック整備です。飛行時間や期間によって「A整備」や「C整備」など、さまざまな段階の整備が行われます。ジェットスター・グループでは、750時間飛ぶごとにA整備、7500時間ごとにC整備、と決められています。C整備では、ハンガーインからハンガーアウトまでほぼ1週間。クルマの「車検」みたいなものです。

航空会社によっては、ドック整備を自社で行わない場合もあります。航空機のメンテナンスやリペア、オーバーホールが専門のエンジニアリングサービス会社があり、そちらへ委託するのです。一定時間を飛んだ飛行機から、順番に整備会社に出すのですが、保有する旅客機の数は限られていますから、何機も同時にC整備に出すようなタイミングになっては困ります。整備で留守をしている旅客機が多すぎると、旅客機が足りなくなり、運航に影響が出るからです。

そうしたケースを避けるため、それぞれの旅客機のC整備の日程を早めに前倒しして、時期をうまくずらしていきます。

一度にたくさんの旅客機が、留守にならないようにしてあるのです。

また、長年の実績があるエアバスA320での運航も、整備の信頼性を高めています。なにか不具合があっても、トラブルシューティングに沿っていけば素直に原因に行き着けるため、整備や修理が行いやすい機種なのです。

現在、ジェットスター・ジャパンの整備部門のスタッフは約90名。20代から60代まで、約40名がライン整備士です。彼らのオフィスは、ジェットスター・グループの拠点である成田空港にあります。大型モニターに、保有する18機の状況が表示され、修理などが必要になったら、それに関しての情報も入ってきます。誰がどの旅客機を担当するかはそれぞれ決まっていて、情報を参考に必要な手順が決められ、旅客機が到着するのを待ちます。

夜間点検を終えた早朝の1便が、快調に離陸していったり、折り返し便が整備を終え、無事に出発していったり。旅客機のフライト一つ一つを支えているのは、さまざまな工夫を重ねているLCC独自の整備システムなのです。

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