低価格攻撃ドローンシステムは古代の戦争への回帰か

どれだけ空虚な平和論を振り回してみたところで、人類の科学技術が戦争によって発展してきた部分があるということは否めません。

例えば航空機も戦争需要によって発展してきました。アメリカのボーイング社は、二度に渡る世界大戦で成長し、特に第二次大戦でボーイング社が建造した爆撃機は、日本への爆撃に使われています。

また、現代の車社会に既になくてはならない存在となったGPSも、そもそもは軍用技術であり、現在民用に提供されているGPS衛星も軍用のものです。

2015年になって、日本国内で相次いで発生したドローンの墜落事件は、日本社会のセキュリティのぬるさというものを改めて露呈しました。単なる観光地である善光寺は仕方ないにせよ、首相官邸上空への侵入を許したのはお粗末としか言いようがありません。

逆に、民用・軍用に限らずドローンの活用や開発が活発なのがアメリカです。特にアメリカ軍では既に第二次大戦機から無人機の研究を行っており、戦後間もない1950年代には「ファイヤビー」という訓練用ターゲットドローンが量産されています。

その後は無人の偵察機などが研究・導入され、そして2000年代に入ると無人攻撃機「プレデター」が、各地紛争地域に実戦投入されました。

そのアメリカ軍が2015年に入って発表したのが「ローカスト構想」これは「Low-Cost UAV Swarming Technology=低コスト無人機巣分かれ技術」の頭文字をとって「LOCUST=いなご」となったといいますが、その内容を見るとむしろ「LOCUST」という名称ありきで、後付で単語を当てはめたように思えます。

そのローカスト、いなご構想の内容とは?

それは、低コストの使い捨てドローン「コヨーテ」を30機装填した格納・輸送用ドローンを射出し、戦場に到着するとまるでハチの巣分かれのごとくコヨーテが放たれ、敵のターゲッティング、ミサイルの誘導、直接攻撃などを行うというもので、まさに農作物を食いつくす蝗害そのものです。

酒見賢一原作の小説『墨攻』のマンガ版には原作エピソードを消化した後にオリジナルストーリーがあり、そこにいなごを育てて敵国に放つという部隊が登場しましたが、まさにそれを現代のドローン技術で実現してしまおうというようなものでしょう。

米軍では他に「CICADA=セミ」というドローンも開発しています。こちらはセンサーのみを搭載した駆動システムを持たない手のひらサイズの小型機で、輸送ドローンによって運ばれ、上空から大量にばらまかれます。自律飛行も無線操縦もできない機体ですが、GPSによって目標地点に誤差5m弱で投下でき、偵察や攻撃支援に使われます。

『孫子』では、戦争は兵器、人員、糧食などを大量に費やす故に、例え拙いといえども速戦を旨とし、長引かせてはいけないと説いていますが、このような低コストドローンは、まさに孫子の戦争哲学を理想化したものと言えるかもしれません。

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