パイロットに向いている性格、向いていない性格
ジャンボ機の機長になりたいとしたら、まずは「パイロットに向いている性格」「向いていない性格」があります。
機長の仕事は、あまりにも生真面目な人、几幔面すぎる人には務まらないと言われています。
ジャンボ機の全長は機種によっては70メートルを超え、離陸重量は200トン近くにもなります。満席なら乗客は500人以上。そこに搭載された全てをたった一人の人間が預かり、自分の判断だけで操縦するのです。
俗説ですが、日本では500人の人が事故に遭えば、確率として1人くらい、自分の知り合いや、知り合いの知り合いくらいの人がいるものだと言われています。
そういった状況で操縦桿を握って、プレッシャーがかからない人はいません。万が一事故を起こして、大勢の乗客たちになにかあったら・・・その人たちそれぞれに関わる家族や同僚、恋人や友だちだっていることでしょう。
とても心配な状況ですが、この心配一つで頭がいっぱいになって、緊張で身体が動かないとか、冷静になれず周囲の状況が目に入らないとか・・・それでは操縦がつとまらないのです。実際に問題に直面したとき、乗客乗員を安全に退避させるためにも、機長自身が最も冷静でいなければなりません。
小さな故障やトラブルを見過ごさず、フライトを中断する勇気や決断力も必要です。時には「良い意味で」周囲の言うことを聞かない人間になるしかない。他人の安全を預かると、そういう判断を要求されることがあります。
そういった「プレッシャーに支配されない、冷静に自分を制御できる性格」の人が、機長に向いていると言われています。
また、つい最近までは「計算に強い人」がいい、とされていました。
旅客機は、機体が現在どういう状況にあるかを知るために、機体の速度や距離、周囲の気温や気圧・・・他にもいろいろなことをたくさん計測して、その結果にもとづいてフライトをします。
これまでは「1500フィートは457m」とか、「今の飛行機の速度が時速920km、空港まであと156km、17分で到着だ」とか、暗算ですぐ計算できる人が必要とされていたそうですが、現在は少し状況が変わっています。コンピューターがなんでも瞬時に計算してくれるからです。計算に強い人というより、コンピューターについての理解の深い人が求められています。
それと、タフな体力と厳しい自己管理が求められることは、昔も今も変わりありません。
機長として、サンフランシスコから成田までジャンボ機を操縦したら、自分はいったんそこから降りる。そのジャンボ機が成田で給油し終わったら、今度は乗客として乗せてもらって、サンフランシスコに帰る。サンフランシスコに着いたら、またサンフランシスコから成田まで操縦して・・・、海外には、そういうスケジュールをこなしているパイロットがいるそうです。
以前なら、成田に着いたら東京に2~3泊して、それからサンフランシスコに帰っていたのですが、リーマン・ショックの不景気の影響でホテル代削減となり、会社から飛行機で行き来するよう指示されたのだそうです。
でも、今はこういったスケジュールは当たり前。これくらいは平気でこなせる気力体力がないと、パイロットはやっていけません。
定期的に行われる厳しい航空身体検査をパスしなければならないし、国際線なら時差ボケとの戦いも・・・。パイロットだけでなく、客室乗務員の女性たちも、常に体調管理と戦っているそうです。