酸素マスクは緊急降下時の命綱!

旅客機には、アウトフロー・バルブという減圧弁が取り付けられています。機体の前後に2つあるこの小さな減圧弁は、上空で機内の気圧を一定に保つため、少し開いた状態にされています。

ですが、万が一このアウトフロー・バルブが片方でも全開になってしまうと、機内の圧力は一気に抜け、短時間のうちに飛行している高度と同じ気圧になってしまいます。

これは、機内と外気との圧力差が約6.0トン/㎡もあるからであり、風船に穴があくと、例えそれがほんの小さな穴でも、すぐにしぼんでしまうのと同じ原理です。

では減圧弁が突然全開になってしまい、コントロールをはずれるような事態が発生した場合には、どのようなことが起こるのでしょうか。

まず機内ではゴーッという爆音とともに気圧が急激に低下し、突風や霧が発生。乗客やクルーは耳に強い不快感を感じます。そのような状況になってしまった際に、パイロットがまずすべきとされているのは、酸素マスクの装着です。

機内の気圧が高度12,000mと同じ状況では、人は30秒ほどで気を失うと言われています。パイロットが気を失ってしまえば、飛行機がコントロールできなくなってしまいますので、何にも優先して酸素マスクを装着すべきとされているのです。

その後、パイロットは酸素マスク内に取り付けられているマイクを使ってほかのクルーたちと連絡をとりながら、酸素が十分に確保できる安全な高度まで機体を緊急降下させます。平常時の5~6倍以上の降下率、運用限界速度のぎりぎりで降下することで、5分前後の短時間で高度12,000mから、酸素マスクが必要ない高度3,000m以下に達することができるのです。

ちなみに、高度3,000mの低高度でフライトを行うと燃費が悪くなってしまいますが、このような急減圧の事態を想定し、必要消費燃料を搭載したり代替空港の選定をしたりしていることで、安全にフライトを続けることができるのです。

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