垂直尾翼と水平尾翼は旅客機をコントロールする最重要装置

旅客機のパイロットは離陸前、駐機から滑走路に出るまでの間に、尾翼の可動部(昇降舵・方向舵)の動きをすべてチェックします。これは、コックピットで行なわれる操作が、きちんと最後尾の舵に伝わっているかどうかを確認するためです。この時点で、尾翼の動きに不具合があれば、離陸は中止。

どの部品もそうだといえばそれまでですが、なかでも尾翼が正常に動かない事態がどれほど危険か、パイロットは十分承知しているのです。

実際、尾翼の損傷をともなう事故は、大事故になることが多いのです。代表例は、日本で1985年8月12日に起こった、羽田発大阪行きの日航ジャンボ機(ボーイング747)の事故です。

同機は、機体後部の圧力隔壁が損傷した衝撃で「垂直尾翼」の7割がふき飛び、操縦不能に陥り、墜落しました。

尾翼には「垂直尾翼」と「水平尾翼」があります。

垂直尾翼は、固定部分の「垂直安定板」と、可動部分の「方向舵」で構成されています。方向舵は左右に振って動かしますが、左に振れば機首は左に、右に振れば右に向きます。これが効かないと、機体の方向安定性が保たれなくなり、激しい横揺れが生じるものです。

一方、水平尾翼は胴体に水平に固定された尾翼で、固定部分の「水平安定板」と、可動部分の「昇降舵」で構成されています。

昇降舵は上下に動かすもので、上に向ければ機首は上がり、下に向けると下がります。これが効かないと、機体の上昇・下降のコントロールができなくなります。

尾翼はこのように、機体の左右上下への移動を支えている部品ですから、それを失うのは飛行機にとって、命取りともいっていいくらいなのです。

2004年10月4日、アメリカ空軍のF-15戦闘機2機が空中接触し、1機は2枚ある垂直尾翼の上部を3分の1もぎとられ、もう1機は水平尾翼を損傷させながらも飛行をつづけ、沖縄県嘉手納基地へと緊急着陸するという事故が起こりました。

この2機はそれぞれ尾翼に傷を負ったものの、方向舵と昇降舵そのものは大きな破損をしなかったため、助かったといわれています。

そういうわけで、尾翼はとても大切な、パイロットにとって「気になってしまう存在」なのです。

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