LCCの就航による日本の空の自由化

2012年はLCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)元年と言われています。

海外ではLCCは既に一般的になっていて、世界全体の航空旅客の25%はLCCが占めています。特にヨーロッパではシェアは40%、アメリカでは30%に達しており、お隣の国、韓国でも40%を占めています。

日本では、2012年3月にLCCの先陣を切ったピーチの発就航に伴って、LCCが注目されるようになりましが、世界的にみれば、LCCが広まっていなかったのは、実は日本だけといっても過言ではなかったのです。この点からすると、日本の空は、閉鎖的だったのですね。

このLCC元年は、航空会社のみならず、赤字の続いてきた地方空港もチャンスととらえているようです。

例えば佐賀空港。

1998年に開港したものの、利用者数は見込みを大きく下回り、多額の赤字に見舞われました。ところが2012年1月に中国のLCC春秋航空が就航したのをきっかけに、当航空の就航日には客が溢れ、空港が活気に満ちています。

佐賀から上海まで約1時間半のフライトで、しかも最安値のチケットだと3000円で購入することが出来ます。中国の団体客や佐賀の大学生、そしてこれまで海外旅行を諦めていた方々も利用しています。

実際、LCC先進国であるヨーロッパの、LCCが就航する田舎の町では訪問客が急増し、その地方が活性化するという現象が起きており、地方自治体の間でLCC誘致合戦も起きているようです。

そして2012年、LCC元祖のこの年に、日本の空に変化が起きました。元祖LCCとも言えるスカイマークは既に1998年に運行を開始していますが、これに対抗しようと、大手航空会社は運賃を同水準に値下げしました。

その結果、スカイマークの搭乗率は次第に下がり、一時は経営が上向きに回復しましたが、その後も赤字が続いたりなどして、上場廃止の危機にまで瀕しました。

このように、元祖LCCが就航していたにもかかわらず、日本はこの10年、先進国の中でも唯一、航空旅客数が伸びていません。それは、世界で利用されているLCCが存在しなかったことに原因であると考えられています。

日本の航空業界は長年、航空行政の保護下に置かれていたため、本当の意味で、自由化は行われていませんでした。

海外に比べてぬるま湯といわれた航空業界が、LCCによって本格的に活性化されます。ヨーロッパではLCC参入後、EU域内での航空旅客数が4割も増加したそうです。これまで飛行機での旅行をあきらめていた人々が気軽に利用できるようになったからです。

このLCCを初就航したのが、皆さんも記憶に新しいと思いますが、ピンク色をモチーフにしたピーチ・アビエーションです。

ピーチはANAと香港の投資会社First Eastern Investment Groupの共同事業として計画、設立された航空会社。関西国際空港を拠点とし、北海道や九州へ路線を開設しています。また、ソウルや香港、台北などの国際線への進出も予定されています。

LCCは大手航空会社とは違ったビジネスモデルで低運賃を実現し、発展してきました。日本でも、2011年2月のピーチ設立当初から注目されていました。

それではLCCはどのようなビジネスモデルをもっているのでしょうか。まずは飛行機の機材です。

世界のLCCの中で、もっとも多く活用されているのが、エアバス社のA320か、ボーイング社のB737の2機種です。この機種は150人~180人乗りで、中型機に分類されます。

この2機種が主に利用されているのは、ベストセラー機のため、大量生産によって安い価格で購入できる、ということが挙げられます。また、中古機市場にも多く出回っており、機種を揃えるのに都合がいいから。

そして、この機種を揃える、ということもコスト削減にとって重要なポイントとなります。

機種を揃えることで、機種ごとにライセンスが必要なパイロットや客室乗務員の雇用やシフトの面からも、簡素化できます。また、同じ機種であれば整備士にとっても慣れた同じ機種なら作業も進めやすく、そして機体の部品の面からも、無駄を省くことが出来ます。

さらに、この2機種は中型機なので燃費がいいという事情もあります。しかし、その点から言えば、飛行距離はあまり長くなく、長距離路線を設定できない、というデメリットはあるかもしれません。

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