翼の形がそれぞれ違う理由とは?

ジェット旅客機の巨大な翼は近くでみると迫力があり、美しい姿をしています。しかし、美術品ではありませんから、外見の美しさのために設計されているわけではありません。

巨大な機体を宙に浮かせ、なおかつ安定した飛行を保つためには、それ相応の緻密な「つくり」を追求しなければなりません。

機能を追及して開発や設計を進めていくと、すぐれた機能が主翼に凝縮されていくのはもちろんですが、それとともに理にかなった美しい曲線が自然に生み出されていきます。

それが主翼の機能と美しさをつくりだしているのです。

ところで、翼の形は飛行機によって違います。小型機などでは胴体と垂直に交わるように、翼が真横に伸びているのに、旅客機の翼は後ろ向きに伸びています。

一般的なジェット旅客機の主翼は、機体と垂直に交わる線に対し25~35度の角度で斜め後ろに向かって伸びるものです。

この角度は、超音速機「コンコルド」では75度にもなります。

なぜ、このように主翼が飛行機によって違うのでしょう。

それは、音速に近い速度で飛行すると、翼の周囲に「衝撃波」が生まれ、これが強い抵抗となり、安定した飛行ができなくなるからです。衝撃波とは、機体が音速に近い速度で飛行するときに生じるものです。機体からたくさんの音波が生じて、それが重なり合い、圧力の高い空気層ができます。

衝撃波は翼による揚力の発生を妨げるため、浮力が得られにくくなり、場合によっては機体を失速させることもあります。衝撃波は機体に垂直な気流で最も起こりやすいものです。翼が斜め後ろか、あるいは斜め前に伸びていれば、その発生を遅らせることができます。

ただし、翼を斜め前に伸ばすと、強い気流を翼の先端で受けることになり、強度の点で難があります。そこで、翼を斜め後ろに伸ばす構造がとり入れられるようになりました。斜め後ろに伸ばした翼を「後退翼」、斜め前に伸ばした翼を「前進翼」といいます。

コンコルドの特徴的な翼は「三角翼」、これは後退翼よりもさらに衝撃波の抵抗を弱めることができるものです。

後退翼はジェット旅客機に多く使われているが、前進翼は高速飛行中に素早く姿勢を変えられるという利点があることから、戦闘機に採用されています。

旅客機のなかに、主翼の先端部分が折れ曲がっているものがあります。

あっちにあるのも、こっちにあるのも同じ旅客機なのに、よく見ると、それぞれの主翼の形だけが違う。そういうこともあります。たとえば、ジャンボ機のボーイング741-400。主翼がまっすぐ伸びているものと、主翼の先端が上向きに折れ曲がっているものがあります。

その先端部分をよく見てみると、実際には主翼そのものが折れ曲がっているわけではなくて、小幅の板を、主翼の先端部に上向きにとりつけたものであることがわかります。

この小さな板は「ウイングレット」(翼端板)と呼ばれる部品です。遠目には小さく見えますが、つけ根部分の幅は3m、高さは1・8mもあります。

ウイングレットは、空気が主翼の下側から上側に回りこむのを防ぐことで、揚力をアップさせる役目を果たしています。

それで飛行中に削減できる燃料消費は3~3.5%。かなりの「すぐれもの」なのです。ただし、ウイングレットはあらゆるフライトで有利な部品というわけではありません。

巡航時間の短いフライトではウイングレットが抵抗を強めることになるため、国内線などでは一般的には採用されません。ウイングレットのある旅客機は国際線を飛ぶ時に使われます。

だから同じ機体でも、ウイングレットがあったりなかったりするのです。

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