旅客機のタイヤを自動車用タイヤと徹底比較!

旅客機の車輪のことを「ランディング・ギア」といいますが、実は車輪だけでなく、車輪を支える脚柱や制動装置なども含む、着陸装置全体のことをランディング・ギアといいます。

「ギアアップ」といえば、離陸後に車輪を格納室にしまうこと、「ギアダウン」といえば、着陸前に車輪を降ろすことです。

車輪は、ジャンボ機(ボーイング747)には18個備えられています。18個という数は旅客機のなかでは最多の数なのですが、着陸時に時速250kmのスピードで走る、250tもの巨体を支えるにはギリギリの数ともいえるでしょう。

ジャンボ機の場合、前脚(ノーズギア)が機体の前方に1脚2輪、主脚(メインギア)が機体の重心よりもやや後方に4脚16輪あります。主脚の16個の車輪が滑走路に接地するときに受ける衝撃は1輪あたり15t以上(自動車15台分)。

それに、接地時に一気に高速回転をはじめる車輪が、滑走路とのあいだに起こす摩擦熱は400度C。相当な高温です。

車輪の負担を小さくするには、もっと車輪の数を増やせばいいのですが、車輪を増やせばそのぶん重量がかさむし、現状でも満杯状態の機内に、これ以上車輪の収納場所をつくることもできません。18個はジャンボにとって最適な数なのです。

では、離着陸の過酷な条件にさらされる車輪の仕様はどのようになっているのでしょうか。ジャンボ機の場合は、1つの車輪の大きさは直径約1.2m、幅約50cm、重さは約120kgです。一般自動車のタイヤが直径65cm、幅16.5cmであることと比較すると、かなりの大きさなのがわかります。それに、車種にもよりますが、自動車の高さは1.5m前後です。

旅客機と自動車のタイヤの違いは、大きさだけではありません。

車輪のなかにはタイヤの強度をあげるため、「プライ」と呼ばれるナイロンなどの繊維層があるのですが、自動車のタイヤでは4層なのに対し、ジャンボ機は28層もあります。これは、自動車の7倍の強度をもっているということになります。

さらに、タイヤの空気圧は自動車の約1.7kg/cm2に対し、ジャンボ機は約14kg/cm2。7~8倍になるのです。空気圧が高ければ、そのぶん衝撃や高速走行に強くなります。

旅客機のタイヤの中身は空気ではなく、上空の寒さでも水滴がつかず、火災時にも燃えにくい窒素ガスが充填されています。

タイヤは離着陸のたびに少しずつ摩耗していきますから、消耗品です。この点については自動車と同じ。ジャンボ機の場合だと約200回の離着陸、期間にして1力月半前後で交換されます。

ただし、外された古タイヤはすぐに廃棄というわけでなく、表面だけを張り替えて再使用されます。タイヤ交換は整備士のたいせつな仕事の一つです。特殊作業車を使ってジャッキアップして、3~4人態勢で1時間ほどをかけて行なわれます。

離陸するときは、まずは旅客機がちゃんと「立っていてくれないと」、飛び立つことができないわけですが、着陸時も、ちゃんと地面に落ち着いて「立っていてくれないと」困るわけです。

それを支えるタイヤの一つ一つは、人の手によって、ていねいに手入れや交換がされているのです。

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