APUは航空整備士が始動、その間にパイロットは外部点検を担当

「APU」とはガスタービンの一種で、ターボシャフト・エンジンとも呼ぱれ、胴体後部に搭載されています。発電機がついていて、自力で起動できる小型エンジン。

ジャンボ機のメインエンジンには自力で始動する仕組みがないので、APUから送られてくる電力がないと、動き出すことができません。駐機中の機内の計器・照明・エアコンなどに必要な電力も、APUから供給します。

航空整備士がAPUを始動する時間帯には、機体の周りにはたくさんの作業車が集まっています。

燃料補給車、飲食物を搬入するギャレー・サービス車、貨物の積み込みを行う貨物ローダーなど。他にも飲用水を補給する車があったり、客室清掃車など、いろいろな役割を持つ車が集合し、フライトに出発する前に必要な作業を行います。

APUをスタートし、メインエンジンを始動すると、エンジンから送られるブリード・エアで機内のエアコンを始動。

その頃、機長と副操縦士がコックピットに入ってきます。二人で手分けして「外部点検」と「コックピットのセットアップ」をするとされていますが、機長が外に行くことが多いようです。

機長が一人でボーティング・ブリッジ横に取り付けられたハシゴを使って地上におり、そこから機体の周囲を一周して外部点検を行います。この頃、各作業車はまだ機体の周囲にいるのですが、機長はその横を通りながら、機体の周囲を一周して、次のような順序で点検することになります。

胴体下、翼下面の各パネル、右主脚の点検。エンジンのカウリング(エンジン・カバー)のラッチがかかっているか。4基のエンジンの空気取り入れ口に異物がないか。エンジン後部に異物や燃料(残燃料)がないか。胴体下、翼下面の各パネル、左主脚の点検。エンジン下部にオイル漏れがないか。

このほかに主脚の点検をしたり、エンジン前方の地面に異物が落ちていないとかもチェックします。機長が外部点検する前に、航空整備士も外部点検を行っていますが、別の人が同じ場所を繰り返し見て回ることで、トラブルの見落しを防いでいるのです。

特に、エンジン周りに物が落ちていると危険です。エンジンがスタートしたとき、エンジンから出る排気の強い勢いで吹き飛んでしまいます。また、エンジンの前方からエンジンの中に空気を吸い込む力も、後方の排気と同じくらい勢いがあります。

小石や工具など小さい物体なら、まるごと吸い込まれてしまい、エンジン内部の部品を破損してしまうことがあります。また、かなり重たいものでも吸い込む勢いがあるので、うっかり誰かが前に立っていたりすると、よろけたり転倒したりすることもあるため非常に危険。

さらに、ジャンボ機の表面に取り付けられている、数多くのアンテナの状態も点検します。

ジャンボ機の前部にはレドーム、気象レーダー、グライド・スロープ&ローカライザ受信、ATCトランスポンダー、VHF、DME、マーカー・ビーコン、ADF、HF、VORなどがあります。

アンテナから送受信した電波によって各種装置を作動させるわけですが、そのコントロールは「主電気装備室」「中央電気装備室」「後方電気装備室」の3ヶ所で行います。

外部点検にかかる時間は15分ほどで、機長はハシゴを上って機内に戻ります。

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