もし、ジャンボ機が時速1000キロで飛んだら・・・

ジャンボ機は時速1000キロ以上を出せると言われますが、飛行中の機内の速度表示を見ていると、せいぜい900キロ。

いつまで待っても、最高速度を出してはくれないようです。

実は、旅客機は最高速度を出すわけにはいかないのです。

最近の旅客機には「FMS(フライトマネジメントシステム)」というコンピュータシステムが導入されています。

当日の気象条件や、積載重量などから、その日の飛行に最もふさわしい「経済速度」を算出。推力レバーなどもその経済速度をもとに、コントロールされる仕組みになっています。

では、もしその経済速度を無視して、最高速度を出してみたらどうなるのでしょう。あるパイロットによると「乗客の皆さんにとって、相当に不快なフライトになるでしょう」とのことです。

速度を上げることで、まずは「揺れ」が激しくなります。

キャビンのシートに振動や騒音がそのまま伝わってしまい、乗り心地が悪いばかりでなく、安全性もよくありません。燃料代もかかる上、機体やエンジンにも負担がかかりますから、機材の寿命を縮めてしまいます。

ですが、最高速度ではないといっても、「経済速度」の時速900キロ(マッハ0.85)は、決して遅い速度ではありません。

世界の空は年々過密になっています。

毎日必ず、世界のどこかで、時速900キロ同士がすれ違っています。相対速度は1800キロ。

けし粒くらいに見えていた対向機の影が、またたく間に大きくなって、ジェット機だと判る姿になったとたん、ほんの数秒で、視界いっぱいにクローズアップされた姿になる。

コクピットで長い経験を積んだ機長の目から見ても、その速度で迫ってくる対向機の姿は「怖い」の一言。

ところで、旅客機全体のクリーニングは作業員が数人がかりで手作業で行うのですが、窓の汚れについてはたいへんな気を使います。小さな汚れだからと放っておくと、対向機が来たとき、機影と窓の汚れとを見まちがえてしまい、危険なことになりかねません。

ですから旅客機の窓は、シミ一つでも残っていてはいけないのです。我々には想像もつきませんが、時速900キロの世界とは、そういったものなのです。

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