パイロットに聞いた、大人気の「フライトバッグ」の中身とは?

パイロット等が航空教室を行ったとき、もっとも多く質問されるのは「フライトバッグの中身」だそうです。フライトバッグの総重量は15kg前後。バッグといっても黒く大きく重そうなカートです。

パイロットは自宅を出る時、荷造り済みのフライトバッグと、スーツケースを持って出かけます。会社に出勤してから飛行機に向かうまでの間は、専用の部屋や置き場所にフライトバッグを置いておきます。

全てのパイロットが1ヵ所にフライトバッグを置くため、自分のものを見つけやすいよう、ステッカーを貼ったり、いろいろと工夫されているそう。

フライトに出発するときは、機長も副操縦士も着席する前に、コックピットの決められた場所にフライトバッグを配置します。パイロットにとって、必要な時、必要な資料をフライトバッグから的確に取り出せることが非常に重要なのです。

フライトバッグの中身で最も大きく重いのは、飛行用の地図「ジェプソンチャート」

フライトの出発地、目的地に関する地図はもちろん、天候悪化などの理由で目的地に到着できなかったとき、どこを通ってどんな場所に向かうか、それに関する航路や空港の地図も含まれています。

ルートマニュアルも必要です。国内だけのフライトなら一冊、国際線も含まれるなら国際用もあわせて二冊となります。

他には、飛行機の出入り口のネームプレート。パイロット本人が管理し、自身で差し替えしているものです。フライト・ログブックも欠かせません。フライトごとの飛行時間、場所などを記入して飛行経歴を管理します。

忘れ物がないか、フライト前に何度も確認するのが、操縦士技能証明書、航空身体検査証明書、無線免許、英語能力証明などの各種証明書。すべてを揃えておかないとフライトできません。

意外に感じる方が多いのがパスポート。世界中を飛び回る国際線のパイロットなら、パスポート不要とはならないのです。

フライトバッグが重くなってしまうのは、地図や書類などが多く入っているためです。パイロットにも機体にも負担となるので、できる限り軽くしたいのですが、毎回、必要なものだけを選んで入れて、この重量となっているものです。

「もっと減らして、荷物を軽くしよう」というわけにはいきません。

そこで、データを減らすことなく、フライトバッグの重量を減らせるEFB(Electric Flight Bag)が登場しました。これまで紙の資料でフライトバッグに詰め込まれていた地図やデータを電子化し、管理するようになったもの。

日本で機長をされている方が、直訳としては「電子航空かばん」でいいかも、とされていたので、それでいいようです。

米連邦航空局(FAA)では、EFBは3種とされています。

Class1は、機体に設置しない、コックピットにパソコンを持ち込むような形式のものです。機体と直接にデータをやりとりすることはできません。

Class2は、これもパソコンのようなものですが、Class1と違い、機体に設置を許可されています。

Class3は、あらかじめ機体に設置されます。最初からコックピットの一部として設計されているものです。

Class1のみ、離着陸時および高度10,000ft以下での使用が禁じられていますが、そのかわり耐空性の承認は必要ないとされています。

Class2・3は使用するタイミングに制限がなく、機体とデータのやり取りをすることも可能です。

耐空性や電波に干渉されない性能が必要となりますから、そのための承認試験が行われます。

Class3に相当するEFBは日本でも使われていて、たとえばボーイング787では標準装備です。

左右の操縦席それぞれに設置されており、A5くらいの黒板みたいな画面で見かけは地味ですが、効果は抜群。離陸や着陸に必要な空港の地図やそこまでのルート、国や空港ごとに異なっているさまざまなルールのマニュアルなどをタイムリーに表示できます。

飛行機のフライトには百科事典を思わせる膨大なデータやマニュアルが必要。それを飛行中にタイムリーに的確に検索できるEFBはパイロットや飛行機の負担を大きく減らしました。

15kgのフライトバッグを10kgにしたと言われるほどです。

EFBによってフライトバッグの重量は大きく軽減されましたが、スーツケースの方では、あまり重さに変わりないようです。

滞在先での健康管理はパイロットの大切な仕事の一部であり、スーツケースに何を入れて出かけるかは大問題。航空会社の人なら旅なれていて、目にも止まらぬ早業でパッキングできるはずと思いがちですが「人による」とのこと、普通だそうです。

それに10kgあっても、15kgを超えても、フライトバッグが重いと感じたことはないとのこと。美しい機体によるハッピーフライトに乗客をご招待する。それが楽しみで、皆さんパイロットをなさっているのですから・・・。

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