航空機を支援するトーイングカーとは?

現在の最新のテクノロジーを駆使した機器を装備した機種と言えば、ボーイング社のB787やエアバスA380が代表されます。地上を走り、空を飛ぶこれらの最新機種でも容易にできない事、それは後進。

航空機は全く後進できないとは限らず、航空機に取りつけられているエンジンを逆噴射し自力で後進することも可能です。

しかし、逆噴射することによりエンジン出力を上げる必要があり、その結果発生する強風が原因となる騒音や周囲の航空機、建物、地上係員への影響が問題となるため、一部の例を除いてエンジンの逆噴射を使用して自力で後進することは禁じられています。

しかし、乗客を乗せた航空機が滑走路へ向かうためには後進しなければならず、その補助となる地上の車両が必要となります。それが「トーイングカー」です。

トーイングカーには主に2種類あり、その1つは「トーバー」という金属のバーを利用する方式の「トーイングカー」。トーバーを航空機の前脚に取り付けて航空機を押し出します。

最大規模のものでは、全長8.6m×全幅3.2m×全高2.8m、車両重量50.5tにもなるモデルもあります。

そして、もう1つは「トーバーレストーイングカー」。これは、トーバーを使わずに航空機の前脚をトーイングカーの車体に抱え込むようにして持ち上げ、その状態で航空機を押し出します。

航空機の前脚を抱え込むためのスペースと装置が付いており、機体の下に潜り込むために車体後部は低くなっています。

エンジンは1万1,040ccの6気筒ディーゼル・ターボを有し、最高出力295ps/最大トルク123.2kg-mものパワーを前進4速・後退2速のセミオートマを介して、4輪に伝えます。

最高速度は30km/hですが、航空機を押し出すときは10~15km/hの速度で走行します。

また、トーイングカーの運転席にはハンドルが前後両方に付いています。トーイングカーは前後どちら向きでも運転しやすいように、操縦装置が両方の向きに取り付けられているのです。

そしてトーイングカーで機体を動かすときは、周囲を監視する要員と1人と運転する要員と2人1組みで作業に当たり、安全に気を配ります。

この巨体と重量、そして大出力は、100tを超える巨大な航空機を押し出すための重要な要素。この50tを超える驚くべき車両重量は、その自重を使ってタイヤに荷重をかけることが目的です。

この荷重が不足すると、タイヤに充分な力が伝わらず空回りしてしまいます。

このトーイングカーを操作するにはもちろん訓練が必要となります。

滑走路の端に設定された訓練エリア、そこでは棒を三角形に組んだシンプルな模擬の航空機を使って訓練し、その後、実機を使った訓練を経て、実機を押すようになります。

この訓練の難所はトーバーという金属の棒を介して航空機を押す場面。トーイングカーが直接、航空機を押すのではありません。航空機とトーイングカーの間にあるトーバーはただの金属棒、操作できるのはトーイングカーのステアリングのみ。

つまり、人間による技巧のみが求められる作業です。

乗客へショックを与えないよう、押している最中にギアを変えることもなければ修正のためにハンドルを左右に切り返すこともありません。

つまり一度押し出したら修正はできません。

とはいうものの、通常の業務では安全を第一に考え、航空機を押しなおすことも考慮して作業に当たっています。

一歩間違えば航空機同士の接触も考えられます。

前述の通り、トーイングの技術には人の介在する工程が多くあります。

技術の進化によりこれらの工程(技巧)にシステムのアシストが加わることができれば、更なる安全性の向上が望めるかもしれません。

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