フライトプランは機長ではなく「ディスパッチャー」が作成

ジャンボ機は必ず、ディスパッチャーに「フライトプラン」を作ってもらいます。航空法で「航空運送事業に使われる航空機」に、ディスパッチャーによるフライトプラン作成を義務づけているからです。

ディスパッチャーは、日本では「運航管理者」という国家資格です。各航空会社に勤務していて、その会社の航空機のフライトプランの作成を担当します。

ディスバッチャーになりたいときは、まず航空会社の採用試験に合格し、ディスバッチャーの助手としての経験を積みます。他にも「操縦、空中航法、気象業務、航空機に乗り込んでの無線設備の操作、航空交通管制の業務」、このどれかを2年以上、または通算して2年以上経験すれば国家試験を受けることができます。

国家試験の項目は、航空機の構造・性能・燃料消費の関係について/航空機に搭載する重量の配分などについて/航空保安施設の機能と使用法/無線通信および無線通信施設の概要/航空機の運航に影響を及ぼす気象現象について/気象通報の組織について/空中航法について、などです。

これらの学科試験と、天気図の解説・航空機航行の援助についての実地試験があります。

ディスパッチャーは出発の数時間前からフライトプランの作成を始め、パイロットがショー・アップ(出勤)するまでに仕上げます。

プランニングに必要なのは、なによりも飛行の安全性。チェック項目は出発空港・目的空港の気象、ルート上の気象、飛行機の重量、搭載燃料量、飛行高度・飛行速度など。そうして出来たフライトプランは、運航乗務員(パイロット)と運航管理者(ディスパッチャー)でブリーフィングを行い、合意することで承認されます。

旅客機において、ディスパッチャーやフライトプランが重視されるのは、車とは性質が違う乗り物だから。

車で出かけるときは、途中で何かあっても、コンビニやガソリンスタンドに行けば大抵は解決します。ですから、山奥など極端な場所に行くならともかく、それほど厳密な計画を立てなくても、行ったり来たりが可能。

ところが旅客機の場合、フライトを中断して買い物に行ったり、「ガス欠になりそうだから給油しよう」ができません。必要な品物はすべて、非常時も含めて予測して、旅客機に搭載しなければならないのです。

それに、飛行機は車よりもずっと天候の影響をうけやすい乗り物です。

地面の上なら、猛吹雪や豪雨の中で車を運転することは、危ないのでやらないほうがいいですが、できないこともありません。

ですがジャンボ機の場合、飛んでいる高度の天候が強烈なので、ときに「飛行不可能の天候」になります。「なんとか強引に飛んでみよう」ができません。

それに車は一日中どんなに走ったとしても、移動距離が限られていますから、出発地と目的地の気候や天候がびっくりするほど違ったりはしません。対してジャンボ機は車とは比較にならない程超長距離移動で、いろいろな気象条件の場所をいくつも通過して飛びます。音速の乱気流も普通にありです。

ですから、フライト中に起こることをすべて予測し、それをカバーできるフライトプランを作成できるのが、ディスパッチャーの重要な仕事なのです。

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